第4話 大学教授殺人事件④

岡山がキョロキョロして灰川を探していると、谷口と東が入ってきた。


「よお、検査結果が出たよ。青酸カリで間違いないようだ。あれ?あの探偵は?真相がわからなくて逃げたか」

谷口の笑い声が漏れ出す。


それに対し岡山がいじわるそうな笑みを浮かべて

「そちらは何か分かったんですか?」


「俺たちは自殺だと考えているよ」


藤川が刑事同士の会話に笑いながら入ってくる。

「あいつが自殺?それはないない」


木下もさらに入ってくる。

「そうかもしれません」


「え?あいつが?」


「明子は他の人から見たら気が強い人に見えたかもしれないけど本当は弱い人なんです。何年か前にも学生のことですごい思い詰めてたし」


得意げな表情で岡山を見る谷口。


しばしの沈黙の後、扉が開き灰川が入ってきた。


「灰川、どこ行ってたんだよ」


「すみません、ちょっと気になることがあって調べに行ってました」


「それで、何か分かったのか」


「ええ、分かりました。ちょっとお話させていただいてもかまいませんか」


頷く岡山を見て灰川が続ける。


「まず、私が気になったのは宮原さんの手です。彼女の爪は深爪で凸凹していました。きっと彼女には爪を噛む癖があったからだと思われます。誰か、彼女の爪を噛む癖を知っていた人はいませんか?」


木下が答える。「私は知っていました。ですが、明子はあまり親しくない人の前では爪を噛むことはなかったので、知らない人が多いと思います」


「俺は知らなかったぜ」

「私も知りませんでした」

藤川と三島が頷く。


「そうですか。ここで、私は一つの仮説を立てました。宮原さんは何者かに爪や指に青酸カリを塗られ、彼女の爪を噛む癖を利用して毒を摂取させられたのではないかという仮説です。警察の方に、宮原さんの手に毒が付いていないか確認して頂ければありがたいです」


「分かった」

岡山が部下に目で合図する。


谷口が不満そうに口を開く。

「いや、さすがに指に何かを塗られたら気づくんじゃないか」


「犯人は宮原さんの指に直接青酸カリを塗ったわけではないと考えています。例えば、何か他のものに付けておいてそれを彼女に触らせたのではないかと」


岡山がハッとして口を開く。

「まさか!三島さんのパソコン?」


「違います!私じゃありません!それなら私じゃなくても他の人たちに藤川先生にだってできるし、調べていただければ分かります!」


「いや、俺じゃねえって!」


「では、三島さん、あなたのパソコンを出して開いていただけますか」


「はい、分かりました」


三島がパソコンを開くと灰川が刑事たちに画面を向ける。


「私が次に気になったのはここです」

灰川の指さす方向にはバッテリー残量が示されている。


東が初めに気づいたようで

「バッテリーが減っていない!」


それに続いて谷口も「確かにそうだな」


岡山も続いて

「ということは、宮原さんの部屋でパソコンを使っていなかったことになるな」


三島は動揺しながら必死に言葉を続ける。

「た、確か、図書館で勉強していた時にパソコンを充電しました」


「それは、本当ですか?」


三島は首を縦に振る。

それを見た谷口はあきれたようにため息をつく。


「実は先ほど図書館で勉強していた畑中さんと会ってきました。彼女によると、あなたはパソコンを充電していなかったと言っていましたが」


「その言い方じゃまるで私が犯人みたいじゃないですか!充電のことだって夏が気づかなかっただけかもしれないし」


「はっきり申し上げると私はあなたが犯人だと思っています」


三島はその言葉に唇をかむ。


岡山が急いで灰川に尋ねる。

「ちょっと待て、じゃあ灰川はどうやって殺したと思ってるんだ」


「私の推理はこうです」


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