第2話 大学教授殺人事件②

一番左に座っているのが、殺された宮原と同い年くらいの女性。彼女は涙を流しハンカチで拭っている。


真ん中に座っている学生と思われる女性は、不安が顔にそのまま表れている。


右に座る男は、イライラを隠す気はないらしい。


岡山が説明を始める。

「では、左から、彼女が第一発見者の木下陽子さん。大学時代からの友人だそうだ。真ん中に座っておられるのが、三島里美さん。彼女は宮原さんの研究室に所属している学生で、16時頃に宮原さんを訪ねてきている。そして、右に座っておられるのが、宮原さんの研究室の准教授、藤川浩平さん。彼は三島さんが宮原さんの直前まで彼女と会っていたようだよ」


灰川がそれに対して質問する。

「どうやってこの3人に絞り込んだんですか?」


「宮原さんの手帳に16時に三島さんと、16時半に木下さんと会うことが書いてあったんだよ。それと、三島さんの証言から藤川さんも容疑者に浮上したんだ」


「そうですか。宮原さんの部屋の前の廊下に防犯カメラがあったと思いますが、そちらの確認はもうしましたか?この3人以外にも被害者と接触した人物がいる可能性も十分にあると思いますが」


「すまない、今、部下に確認してもらっているよ」


「あの、刑事さん、その方は?」

三島が刑事らしくない灰川の存在が気になったようだ。


「すみません、紹介まだでしたね。彼は探偵の灰川さんです。捜査協力してもらっています」


岡山の答えに合わせて灰川がお辞儀すると、藤川の部屋に大きな笑い声が響いた。

「へ―、警察も民間人を頼るんだな。まあいいけど、早く俺の無実を証明してくれよ、探偵さん。あんな奴の殺人の犯人探しにはもう付き合いたくねーよ」


「申し訳ありませんが、もう少しだけお待ちください」

岡山の返事に対して藤川は舌打ちで返す。


岡山は少し悲しそうな顔をしながら続ける。

「では、確認として、時系列順に詳しく何があったか確認させていただきます。いいですね?」


頷く三島、ため息をつく藤川、泣き続ける木下。


「まず、藤川さん、あなたが宮原さんを訪ねたのは16時ちょっと前ですね。どのような用件であなたは宮原さんを訪ねたのですか?」


ため息の後に「文句を言いに行ったんだよ!あいつ、俺の論文を見るといつも何かしらケチ付けてきやがる。『あなたはまだ一流の科学者とは言えない』ってな!しかも、学生の前でもお構いなく俺を批判してくる。そのせいで学生たちも最近じゃ俺を見下してる!そうだよな、三島!」


「すみません」弱弱しい声で返事が返ってくる。


「まあ、悪いのは学生じゃなくてあいつだけど。でもな、俺は殺してない!俺があいつと会ったのは、あいつが死ぬ30分前えだ。俺に殺すことなんてできないよ」


右の髪の毛をいじりながら考える灰川。


その様子を確認して岡山は続けて三島に質問する。

「次に宮原さんを訪ねたのは三島さんですね。時間は藤川さんが部屋を出た直後の16時。宮原さんと何を話していたんですか?」


「レポートを見てもらっていました」


「そのレポートというのは?」


三島はカバンからパソコンを取り出してレポートの画面を開いて見せる。

「これです。調べてもらえばわかると思いますが、学校のコピー機が壊れていたので仕方なくパソコンで見てもらました」


パソコンの左下を見た灰川の手が一瞬止まる。


「なるほど、何時ごろまでいましたか?」


「確か、16時20分ぐらいだと思います」


ここに来てようやく灰川が口を開いた。

「20分間ずっとそのパソコンを見ながら、宮原さんと話していたんですか?」


「そうです。結構直さないといけないところがあったので」


「それでは最後に木下さん。あなたが宮原さんに会ったのは16時半でいいですね?」


木下はすすり泣きながら答える。「はい、そうです。今日、夕食を一緒に行かないか誘おうと思って行ったんです。」


「夕食には一緒に行かれるんですか?」


「はい」


「よくあんな女と食事になんか行こうと思うな」

藤川が横から口をはさむ。


「やめてください、藤川さん」

岡山が止めに入る。


「てか、もう犯人は三島か木下のどっちかってことになりません?俺、もう帰っていいですか?」


「待ってください。もう少しで防犯カメラの映像が届くと思いますから、それまで待っていてください」


扉が開き岡山の部下が入ってきた。

「お待たせしました。こちらが防犯カメラの映像になります」

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