クロワッサン

かおる

第1話 大学教授殺人事件①

南天大学の宮原明子教授の部屋にて、事件が起きたらしく警察が集まっていた。


寝ぐせのついた右の髪の毛をいじりながら、首に手を当てて苦しみの表情を浮かべながら死んでいる宮原の遺体を見下ろす一人の男。

彼は、高身長で痩せている体を縮ませながら宮原の手に注目する。


そんな彼に刑事である岡山満が声をかける。岡山は小太り体系で人が良さそうなオーラを放っている。

「どうだ、灰川、何か分かったか?」


そう、このもじゃもじゃ頭のひょろっとした感じの男が、灰川英治という探偵である。


岡山の声に全く反応しない灰川は、遺体に釘付のようだ。


そんな彼が捜査に協力することをよく思わない刑事はやはりいるもので、その一人がベテラン刑事の谷口である。

「おい、岡山。どうしてこんなパッとしないような男と捜査してるんだよ。なあ、東」


東という男は谷口の部下で新人刑事である。立場上、谷口からの問いにNOとは言えない東はただ首を縦に振っている。


「まあまあ、そう言わずに」

岡山は優しくかつ強引に、慣れた感じで二人の刑事を部屋から追い出す。


「おい!開けろ!岡山!」


谷口と東が追い出された先には、中年でやせ型の1人の女性が立っていた。山下みきという女性だ。

「ちょっと、静かに!これじゃあ、英治さんが推理に集中できないじゃない!」


山下の迫力に負けて黙りこむ谷口と、それを不思議そうに見る東。

「谷口さん?」東から小さな声が漏れだす。


「よろしい」山下は静かになった谷口を見て満足したようだ。









灰川はスッと立ち上がると岡山に声をかける。

「すみませんが、事件の概要をもう一度話していただけませんか」


「分かった。殺されたのは南天大学で生物学の教授をしていた宮原明子さん、50歳。殺害場所はここ南天大学の彼女の部屋。詳しいことは現在調査中だけどおそらく青酸カリによる中毒死。第一発見者は、宮原さんと仲が良かった同じく教授の木下陽子さん。木下さんは午後16時半ごろ宮原さんを訪ねたところ彼女が苦しんでいて、すぐに意識がなくなったそうだ。救急車が付いたころにはもう亡くなっていたようだよ。木下さん、辛いだろうな、お友達が目の前で苦しんで亡くなるなんて」


なぜか涙ぐむ岡山に対して冷静に返す灰川。


「宮原さんが亡くなる前にこの部屋を出入りした人物は誰かいるんですか?」


「ああ、その人達なら容疑者として隣の部屋に集めてもらっていいるよ。彼らと会うかい?」


「お願いします」





物置のようになっている部屋の真ん中に置かれたソファーには、男性1人と女性2人が座っていた。泣いている人や不安そうな人、怒っている人、このような状況で抱く感情は人それぞれだ。









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