第14話 魔王が封印されてる場所の宗教文化圏

若干古いゲームやラノベの題材の話になりますが、よく魔王が封印されてる事ってありますよね?そこが何らかの「霊廟」みたいになっている。古い作品ですが、ウィザードリィ4のワードナが封印されていた場所も、ダンジョンの最奥なのに何だかそういう雰囲気でした。


「霊廟」というと、中央アジアや北アフリカなどのイスラーム世界全域に広がるスーフィーの「廟」を思い出してしまう。トルコのコンヤという所の旋回舞踏で有名なメヴレヴィー教団の霊廟はとても有名です。トルコだけでなく、中央アジアや特にシーア派が広がるイランやイラクではこの「霊廟(イマームザーデと言います。12人のイマームとその関係者の霊廟で様々なご利益があるとされてます。)」が重要な巡礼地です。


恐らく魔王が封印されてた所も、この地域の宗教文化圏であって、見た目は西ヨーロッパ風でも、魔王辺りの文化はヨーロッパではなく、中央アジアなどのイスラーム圏なのでしょうね。トルコ東部の有名なスーフィーの「霊廟」は、不思議なエピソードで溢れてます。トルコと言えば、モンスターと心を通わせる事ができるドラクエ5の主人公も、何だかスーフィーの逸話を連想しそうですが。見た目が西ヨーロッパ風の民族衣装ではないし。中近東風の民族衣装の主人公。「霊廟」は中国にもあるので、ユーラシア広域文化圏なのでしょうね。


この魔王が封印されてるというコンセプトに結構ハマった事ありました。魔王はさり気なく中東やアジアの文化入ってますね。見た目がヨーロッパ風だからと勘違いしてはいけません。


それで私が考えた魔王モノのお話は、教会と魔王(と後に呼ばれる者)が裏で結託して、国際秩序の現状変更(すなわち国境線の引きなおし、国際秩序のバランス・オブ・パワーの再編)を企んでるという話でしたが!、2022年2月のウクライナ侵攻以降、あまりに俄然性が高すぎる事に唖然としました。これを思いついたのは2022年2月以前のかなり前なのでしたが。


魔王という圧力を使って、教会が国際秩序の再編を企んでるのです。ロシアにおけるウクライナ侵攻以降、それまであまり知名度が高くなかったグローバルサウスの国々や、トルコ、イラン、サウジアラビアと言った国々が国際政治のプレイヤーとして前面に出てきた。ウクライナ侵攻は、単なるロシアとウクライナの話ではなく、多方面に影響が出てる。


振り返って思えば、何も魔王を圧力にした国際秩序のパワーバランスの構築は今に始まった事ではなく、旧ソ連もそうだった。自由放任の資本主義が修正された資本主義(奇しくもゴルバチョフから、日本はもっとも成功した社会主義国だと揶揄された)が出てきて福祉国家化したのも、旧ソ連の国際的な圧力が原因だった。ロシアはまたしても、西欧のバランサーとして動かされてるではないか。グレート・ゲームそのものである。という


西側との「悪魔崇拝」との戦いを掲げてるモスクワのキリル総主教は、元々はエキュメニカル推進派(東西教会の合同)だった事を忘れてはいけない。旧ソ連時代の宗教弾圧の時代、どれだけ宗教は権力に左右されるのか身を持って知ってるわけだ。そこにバチカンが手を差し伸べたのだとしたら、そのような事が想像できるとしたら、私の「魔王論」は絵空事ではない。


ウクライナ侵攻以降のヒステリーとも言えるロシアフォビアは、まるで魔王軍に対する対応そのものに見てるわけですが。


私の想像なのですが、多分バチカンは共産主義を倒すために、反共政策としてロシア正教の隆盛を決定した。決定したのは1965年の「第二バチカン公会議」なのね。その計画上に今のロシア正教の隆盛がある。カトリック教会は、それまでの伝統を捨ててまでも東方正教会に寄った。第二バチカン公会議は、カトリックの正教会化だ。(カトリックの正教会化はフリーメイソンという東方正教異端の流れを汲む勢力の浸透でもある)ただし、でかい組織なので、バチカンの動きが現実化して誰の目にも明らかになるのは、「忘れた頃にやって来る」わけなの。


それが結果として表れたのは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻なわけ。


スターリン時代以降、ロシア正教会は政府に妥協する事で生き延びて来た。その時にしっかりと手を差し伸べて支援したのは恐らくバチカンなのね。ロシア人は非常に恩義を大事にするのが西側と違う所。


ロシア正教会を盛り上げて、科学的無神論を掲げる共産主義をロックアウトするのが恐らくバチカンの戦略なわけ。その流れの第一段階がポーランド出身の教皇のヨハネ・パウロ2世の採用だったわけよ。ヨハネ・パウロ2世の決断で、旧ソ連の衛星国だった中東欧カトリック圏の国は旧ソ連から引き剥がされた。


最近、世界的に民主主義がアレになってるのだけど、今までの民主主義ブームはカトリック教会からしたら、「共産主義よりもマシ」という妥協案だったわけよ。共産化するより、宗教の自由がある民主主義がマシだから、中東欧地域だけでなく、台湾でも韓国でも民主化運動が進んだわけ。


旧ソ連の崩壊で資本主義に歯止めが効かなくなったように、民主主義もまた、共産主義がなくなるといらなくなったと。民主制って元々「最悪の体制」というのが前近代の西欧社会の認識ですからね。


それで東西冷戦の構造を再構築して、宗教ベースの社会主義を作ろうとしてる。それがこれからの時代の多極化する社会の基礎となる。最近、地動説アニメで12歳の子が大学に入る話ありましたけど、昔は大学に15歳くらいで入ってあちこちの大学を遍歴するんです。ヨーロッパの職人修行みたいに。


宗教によって多極化、リージョン化する時代はウェストファリア体制の主権国家の時代ではなく、それ以前の中世的な世界です。2014年のISの台頭などによってウェストファリア体制が揺らいでいたのですが、ここまで来たのですよ。


魔王は、誰よりも教会が企画する国際秩序の現状変更に貢献という事実を元・魔王論者の私はどう考えればいいかわかりません!

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