第13話 ポーランドは啓蒙主義が怪しい国「チ。-地球の運動について-」

いよいよ今晩からアニメがオンエアですね。地動説アニメ「チ。-地球の運動について-」。漫画は4巻まで読みました。人物描写が非常にうまいです。


それで、この地動説漫画の舞台は15世紀のポーランドがモデルらしいのですが、よくある一般的なラノベやアニメにある、「教会が隠してた真実ガー」という系の設定なのですが、ポーランドという国ではそれがかなり怪しい場所だと思います。


「教会が隠してた真実ガー」系の話って、所謂西ヨーロッパはユーラシア地域からしたら閉鎖世界で、ダイレクトに東方正教圏やイスラーム圏の情報が入って来にくい位置にいるから、それは有効なんです。この「教会が隠してた真実ガー」系って、いわゆる「啓蒙主義」と言うのですが、歴史教科書ではフランス革命を起こしたとか書いてありますよね?


でも、ポーランドってそういう西側とはかなーり違う文化なんですよ。ピエロギというポーランド料理などを見ればわかりますが、シルクロードを伝った文化がダイレクトに入ってる所ですよ。そして、ウクライナやベラルーシなどのロシア世界と接していて、更にはリプカ・タタール人などの、昔からずっとポーランドにいるムスリムもいるのです。更には、西側とは桁違いのユダヤ人人口を抱えてまして、アシュケナジム(ユダヤ人)の文化的影響は西側とは比較にならないほど強いんです。その辺りの文化が混じってるから、日本から見て西ヨーロッパよりもかなり東方的な感じがするんですよ。


なので、ポーランドのカトリック文化は、西側のような純粋で同一性高そうなそれと違って、かなり東方成分多そうな感じがします。


それなのに、西側のような宗教改革の影響が強くなかったせいで、凄く中世的な感じが出てるのがポーランドのカトリックですね。で、作中の天文への情熱のあの感性は、チェコ人っぽく感じるので、あの地域の要素ミックスなんですよね。15世紀のプラハのカレル大学のような。


で、作中にピャスト伯(実在の人物がモデル)が、異教徒(恐らくムスリムのタタール人か何か。クリミア・タタール人かも?)の力を借りて天球儀か何かを作ってるシーンがあるのですが、これって草原の民のムスリムが星の位置だけを頼りに、メッカの方角を割り出したり、祈りの時間を測定するための生活に必要な技術なんだろうなぁとしみじみ考えながら見てました。それがピャスト伯の研究室に流れ込んでると。


そういう東方的な要素が結構流れ込んでる国だからこそ、啓蒙主義が怪しいように感じてしまう。さらに西側と違ってユダヤ人の頭数が多いというのも影響力が段違いな所がある。


一般レベルでは中世的な西側よりも純粋な素朴な信仰かも知れないのだが、作中に出てくる人達は違うので。


東方世界との交流(コサックなどの東方正教徒やタタール人などのムスリムとの交流)がある場所なので、一直線な啓蒙主義にはならないような複雑系思考回路が醸成されそうな気がした。宗教や文化が混じる所ではよくありそうな話。


「教会が隠してた真実ガー」で発起するのは、ドイツ語圏(プラス英米)のようなイメージがあるな。それはローマとドイツ語圏の歴史問題があるのでね。


いわゆる西スラヴ語を話す人達は、ドイツ人と思考回路違う。


「教会が隠してた真実ガー」ってユーラシア地域から閉鎖世界で、教会が情報を一元管理できる世界だからこそ有効な気がするわけで、大量のユダヤ人や異教徒が行き来する所では(モンゴル系の仏教徒なども下手したら接触可能)どうなんでしょうね?


最初は私はヨレンタさんは、一瞬改宗ユダヤ人と勘違いしましたもの。その時代、一般人の女性で読み書きができて学問に通じてるのって、ラビ(ユダヤ教の宗教指導者)の娘とかそーゆー系譜の人が多そう。一般人のキリスト教徒の女性で知識人というと修道女になってしまう。この辺りが本を重視するユダヤ文化の連想する香りが。


神聖ローマ帝国の首都がプラハにあった時代、ユダヤ人の銀行家は活躍してましたから、そういう系のその伝手でピャスト伯にコネがあるのかな?と想像してたら、そうじゃなかった。


色々と背景を想像しながら見てます。

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ゲーム好きのための西洋古典(ギリシャ・ローマの古典)と元ネタ解説 まりさろばーとそん @palmonsen

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