第10話 デュエマの光文明はユーラシアをまたぐ宗教空間
こんにちわ。今回はデュエルマスターズの光文明の話をします。デュエマ(以降、デュエルマスターズをこう言います)の光文明はかなり広域のユーラシア地域に広がる、共通した宗教性を持ってます。いわゆる「光の哲学」というものは、西欧キリスト教にはなく、東方正教会やイスラーム(特に中央アジアのイスラーム)、西域の大乗仏教、そして日本や中国までたどり着くものです。このユーラシアをまたぐ宗教の流れを一般的に「イルミナティ」と言ったりします。
シルクロードのルート的に北ユーラシアのステップルート(草原の道)と、西域から中央アジアのオアシス都市を抜けるオアシスルート(オアシスの道)の2つです。
一般的に知られてるイルミナティは18世紀南ドイツのバイエルン王国(現在のドイツ連邦共和国のバイエルン州)のインゴルシュタット大学のアダム・ヴァイスハウプトという人が始めた学生サークルです。インゴルシュタット大学は元々イエズス会の大学で、1773年の教皇庁におけるイエズス会解散令の後にイエズス会士が追放されて、一般教員が格上げになりました。
アダム・ヴァイスハウプトもそこで格上げになった人物で、現代で言えば上智大学が国立大学になって一般の非常勤講師が准教授辺りになったような感じの事件です。
で、インゴルシュタットって旅行記を見るとかなりのどかな田園地帯で、こんな絵本のような風景の所でイルミナティが生まれたと思うと何とも不思議な感じがします。
で、イルミナティの本場は中東なのですが、その辺りの世界史的に文明の中心に住んでる人から見ると、南ドイツのバイエルン州ってかなり辺境に見えてしまうのだろう。
それはともかく、ユーラシアをまたぐ宗教空間としての光文明の話をします。
その1 色彩感覚が西欧じゃないイルミナティ
デュエマの光文明のカードを見て下さい。キンキラキンでこのカードの色彩感覚を西欧だと思うと何か違和感がある。むしろ、よくテレビなどに出るウクライナ正教会の教会のような、これ見よがしに金箔が貼ってある、あの感じに近い。他にもエミレーツ航空のファーストクラスのような、金色が自己主張してる感じとよく似てる。つまり色彩感覚が、ロシアや中東に近いと。
時々見るウクライナ正教会の教会は金箔がこれ見よがしに貼ってある色彩感覚を見て、西側の教会にはそのような風景は一切見られずに、金はデコレーションなのだ。
この辺りの色彩感覚の違いを取ってもウクライナは本当に西側なのだろうか?
まず前提として、光文明は恐らく東方正教圏やイスラーム圏などのユーラシア地域に近い所をカバーしてると。つまり西側ではない世界だと。でも、元々イスラーム文化の強かったスペインは実は光文明の勢力圏にあったかも知れない。
その2 ユーラシアをまたぐ「光の神学」
東方正教会(ロシアやギリシャのキリスト教)やイスラームには神を光に喩えるような「光の神学」があります。神学というよりも、神秘主義の表現なのですが。これは実は西域の大乗仏教にも似たようなものがあり、西欧以外のユーラシア地域の宗教広域にかなり見られる表現です。
デュエマの光文明の勢力圏は実は、日本のカードゲームは西欧っぽいから西欧だと考えられやすいけど、そうではない世界という事なのですよね。
その3 ジョージア正教会のイコン
旧ソ連の構成国だったのだけど、今は親米国(スターリンの出身国なのに)のジョージア(グルジア)という国、そこにはイエス・キリストを太陽として、12使徒を12星座に喩えるイコンがある。このイコンって凄く光文明的だなと思った。
ジョージアは旧ソ連の構成国だったせいか、ロシアの勢力圏だと勝手に思われてるのだが、実はロシアとの歴史的結びつきはあまり深くなく、18世紀のロシアの南下政策に関係がある。歴史的にシリアやイラン、イラク方面と関連が深い。なので、イラクの天文信仰の流れが強い伝統の流れを受けて、イエス・キリストを太陽に、12使徒を12星座に喩えるイコンがある。
東方正教会は現地のローカルな風習を大変大事にするので、ウクライナやロシアは現地の土着信仰、ジョージアはイラン、イラク方面の文化の影響を受けた土着信仰が大事にされたのかも知れない。東方正教圏は宗教改革がなかったので、本当に古いものがそのまま残ってたりするのです。
未確認情報なのですが、旧ソ連時代の1930年代まではヴォルガ河沿岸地域(旧スターリングラード、現ヴォルゴグラード)にイエス・キリストを太陽だと見る農村の信仰があったそうな。旧ソ連時代の教育の普及であんまりなくなったそうなのですが。
これまた未確認情報なのだが、このイコンはジョージアの聖人の聖ニノの伝説辺りから関係あるらしい。
なので、現在のウクライナで行こなわれているような、西側の勝手な「上から」の圧力でクリスマスの日時を変更したりするのは、現地の感覚だとありえない。こうやって「上から」の圧力で規格化するという思考回路は大変西側的な行動様式だと思います。
このジョージア正教会のイコンを見て、デュエマの光文明を思いつきました。
その4 デュエマの光文明のフレーバーテキストが神秘主義者の言葉
デュエマの光文明のフレーバーテキストは大変に神秘主義的です。引用します。
《巡霊者メスタポ》
「真理を鵜呑みにしてはいけない。まず疑い、納得しても心からは信じるな。」
これに似た言葉はよく仏教でも言われますし、神秘主義ではかなり定番な感じですね。
それに巡霊者(巡礼者)というのは、東方正教会の霊性です。(サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼などカトリックにもあるのだが、サンティアゴ・デ・コンポステーラはスペインなのでやっぱイスラームの影響が?)
《平和の守護者メ・フューサー》
「言葉だけでは伝わらない真実がある。」
神秘主義者の体験は言葉で語ることができないものです。(なのでシンボルで表現される)デュエマの光文明は神秘主義的傾向を持ってるのですね。歴史的に神秘主義者が激しく取り締まられた西方キリスト教とは異質な流れを感じます。
神秘主義は政治的にはアナーキーになると佐藤優の本に書いてあったのですが、組織防衛傾向が強いカトリック教会で神秘主義者の取り締まりが強いのは、この傾向を留意してかも知れません。
実にデュエマの光文明のフレーバーテキストは神秘主義的で味合いがありますね。
その5 ライトブリンガーはルシファー(ルシファーの語源はラテン語)
デュエマの光文明の「ライトブリンガー」は「光をもたらす者」です。ルシファーはキリスト教以前ではローマの女神のディアナ(ギリシャではアルテミスに相当)です。キケロ全集にそう書いてあります。(未確認情報ですが、ルシファーとされてるイザヤ書の表記はヘレル・ベン・サハルつまり明けの明星らしいですが、オリエントの女神信仰が関係あるそうです。となると、ディアナと近いかもですね。)
それにルシファーの語源はラテン語(テルマエ・ロマエの主人公の名前のルシウスと同じ語源)です。西欧キリスト教ではルシファーというのは大変否定的な存在として描かれますが、東方正教会関連ではルシファーの「る」の字も聞いたことないのは気のせいでしょうか?
アヤ・ソフィア(昔はハギア・ソフィア)の壁画に新約聖書の「私は世の光である」というイエス・キリストの言葉が略字で書かれてるそうですが、光と聞いてすぐルシファーを連想する西欧キリスト教と違って、東方正教徒の人達にとっては、聖書の言葉通りイエス・キリストを指すのかもですね。
なので、光文明というのは非ラテン語圏(ギリシャ語、スラヴ語の世界)の可能性があると。
その6 ダビデとソロモンはイスラームの預言者
デュエマの光文明のカードに「英知ソロモニアス」と「英知ダビドゥール」という、ダビデとソロモンをモチーフに(したであろう)カードが登場しますが、ダビデとソロモンが預言者とされてるのはイスラームであってユダヤ教ではありません。
ユダヤ教ではダビデ王は正統なる王(イメージ的にイスラームのカリフに近いと感じます)ですが、ソロモン王は亡国の王で一神教をないがしろにし、多神教に走りました。
ソロモン王の評判がよろしくないのがユダヤ教です。でも、イスラームではダビデもソロモンも預言者とされてます。なので、デュエマの光文明はイスラームの思想が隠れてそうです。なので、デュエマの光文明の「使徒」だってギリシャ語のアポストロスではなくて、アラビア語の「ラスール(預言者ムハンマドは神の使徒である〜の使徒)」なのかも知れません。ちなみに、ヘブライ語でもアラビア語でも預言者は「ナビー」です。
その7 「黙示」と「英知」
デュエマの光文明には冠詞に「黙示」と「英知」とついてるカードがあります。「黙示」はヨハネの黙示録から来てるのでしょうが、「英知」って何?聖書の知恵文学なわけがない。
黙示録の「黙示」というのは「覆いを取る」という秘密を開示する意味合いがあるそうです。なので、黙示録は英語だとリベレーション。
----------ここまで----------
デュエマの光文明の雑感を書いてみました。
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