第11話:次期魔王さまに突然の訪問者

その後俺たちは、洞穴で一夜を過ごした。狼のアッシュの魔石に魔力を注ぎ巨体にさせた後、シュヴィとまるまって寝たため、寒いはずの洞穴も温かく感じた。そして何よりもシュヴィの寝顔が可愛かった。


「起きたか、シュヴィ?」

「おはようお兄様!なんだか温かくてよく眠れました。」


シュヴィは眠気まなこを擦って少し気怠そうに答える。ベッド代わりにされていたアッシュはというと、朝ごはん調達のために狩りを命令している。使い勝手のいいペットをゲットしたなぁとしみじみ感じていると


(ご主人様、良さそうな食材を狩ってきました!)

「おかえりアッシュ!それはまぁ。うまそうな肉だな!」


アッシュは豚のような動物の死体(鮮度抜群)を咥えていた。異世界産の豚であるためか、大きめのサイズでキバなども生えている。だが、朝食から肉はちょっと重いかもな。


「俺はこのお肉を調理しておくからアッシュとシュヴィで食えそうな山菜ときのみを見つけてくれ。」

(「承知しましたー!!」)


二人は阿吽の呼吸で返事をして勢いよく洞穴を飛び出ていった。二人が飛び出した後、その場には旋風が起きてアニメや漫画でよくみる砂埃って実際のも舞うものなんだなと感心する。


俺は周囲の木や石から、食器を作成する。昔の人類もこうして生活していたんだよなと考えると時代ごと転移しているような気持ちになる。あー現代の便利な鉄器使いたいー!誰にも届かない希望を胸の中に吐いて捨てた。


料理の方は順調で昔みた動画のように豚を切り分けるといい感じにできた。そうして豚の食べきれない部位は洞穴の奥の方にやっておいた。きっと誰か食べてくれるだろう!決してこれはポイ捨てなんかじゃないからな!


「ほっ!」


そうして、俺は初級魔術ならイメージだけで発動させることができるようになっていた。火球をいい感じに調節してお肉のぶち当てる。ばちばちと音が鳴り表面が焼けていくのがわかる。


しっかりと低温で中まで火を通せと何かで聞いたのでしばらく火にかけておいた。周囲には焼いた肉のいい香りが広がる。味付けはそこらへんのハーブでしたため、この世界では珍しい味付けとなった。


この香りがまさかを引きつけることになるとはこの時は思いもしなかった。シュヴィとアッシュの帰りを待ちながら食卓や椅子の準備をする。幸いこの森には豊富な木材と石材があるためそこそこのものは作れる。


「お兄様ーーー!!帰ってきたよーーー♪」

(良い野菜ときのみを見つけました!!)

「おうおう二人ともおかえり!」


両手いっぱいに取ってきたであろう食材を抱えるシュヴィと背中にたくさん載せてるアッシュの頭を撫でる。二人とも似た髪色、毛色で双子を撫でているかのような感覚になる。双子といえばハルとアキ、ララとシュリは元気だろうか?心配してないといいんだけど。


「じゃあそろそろ朝食にしようか!」


朝食のメニューは「摘みたて山菜のサラダと豚の香草焼きそれに牛魔物の加熱処理済みの牛乳」だ。牛乳がメニューに入ることで現世の朝食らしくなっただろうか?


「お兄様!とても美味しいです!特にこのお肉は今まで食べてきた中でもダントツで美味しい♪」

(ご主人様!すごく美味しいな!どういった味付けをしたんだ!?)


二人は俺の方を見て美味しいといった表情で笑いかける。アッシュは魔力を少し抜いて小さきサイズにしているので笑った時に犬歯がチラッて見える。シュヴィも似ていて笑うと八重歯がチラッて見える。


こうして誰かに料理を振る舞うのはいつぶりだろうか?それこそ転生する前ぶりだろうな、こうしている間も現世の時間は止まっているので、ケンタやサクヤが被害を被ることはないだろう。そう考えると何か異世界旅行でもしているような気持ちで少し楽になる。


「ここだ!見つけたぞ!!」

「少しいいですか!!??」

「お邪魔します。」


俺らが朝食を食べていると突然男2女1の人間の冒険者パーティが洞穴へとやってきた。洞穴ではガイコツが散乱していたり、さっきの豚の毛皮なんかがおいてある。その為骨も人間の骨だとは気付かないだろう。


「何用だ?武器を捨てろ。これ以上近づくなよ」

「ち、違うんです!!」


パーティの中でも一際大きいやつが言った。俺はこの世界の人間のことをよく知らない。前世でのゲームの知識でこういう冒険者たちは大抵魔物に強い恨みを持っているはずだから不用意に近づくことはしないようにと思っていた。


「おら、どうしても腹が減ってば、もうしにそうなんだば。」

「トンパがどうしても食事を取りたいっていうから森に広がるを辿っていたらここに着いたんだ。あなたたちの朝食会の邪魔をしたことを詫びる。本当に申し訳なかった。」


そう言って3人は頭を下げる。そうしてお願いがあると言って食材を分けてくれないかと言う。正直食材を分けることには何の問題もないのだが、俺はこいつらに自分の料理を振る舞ってやりたいとも考えた。


「さっきの朝食で、食材は尽きてしまった。動ける2人とアッシュとで食材を取ってきて欲しい。トンパの面倒は俺とシュヴィで見る。食材を取ってきたなら俺が昼食を振る舞ってやる。」

「あ、ありがとうございます!昼食の食材必ず取って参ります!」


俺はアッシュに食材記憶を伝えた。俺とアッシュは共有した思考媒体で会話ができる為、メモを渡すこともできるし遠隔で意識を伝えることもできる。


「あ、あのぅ、、私もここに残っちゃだめですか?絶対足手纏いになりますよぉ。」


おどおどした感じの小娘がそう言う。確かに魔物狩りをするにはひ弱な図体をしているし、顔立ちも穏やかでどうにも箱入り娘って感じがする。魔道のローブを着ている為パーティのヒーラーか魔法使いといった役回りなんだろう。


「かまわない」

「ありがとうございます!!」


そう言った魔法使いは嬉しそうに飛び跳ねた。

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