閑話:ここまでの話
俺、井原リョウスケか目が覚めると異世界にいた。
目の前には知らない妹に、見慣れい部屋、どことなく違和感だらけだった。
そんな風に困惑していたところで日記を見つける。
日記を読み進めるうちにこの世界がもともと徹夜でクリアしたVRゲームの世界であったことに気づく。
しかも転生した先は作中きっての大悪役の魔王であった。
元の世界への未練や不安心に苛まれているところで、日記が不意に光り始めた。
真っ白な意識の世界で一際大きな天使がいた。天使は大柄であるが華奢な顔立ちでいかにも好青年といった風貌だ。
彼の名前はウリエルという。天使見習いで前の体、リュークの担当天使だったそうだ。
この世界はVRゲームの世界と同じであるがこの世界が滅びることによる影響が現世にも伝わってしまうため、この世界を守ることが必要になってくる。
ウリエルがいうには今から3000年後に起こる勇者と魔王との戦いで勝った方が世界を滅ぼすのだという。
おれは戦いを避けるために周囲の人たちと協力して平和を目指そうとする事を決意した。
意識の世界から起きると日は昇っていた。
ドアの外から使用人の声が聞こえて、返事をする。普段どうりにしようとしていたが、どうやら丁寧な受け答えにすごく驚いていた。
また、名前を読んだり日々の感謝を伝えたところ涙を流して喜んだ。
前職でのPTSDに加えて俺のそっけなかった態度が重なりとても不安だったようだ。
彼女にもこれからの決意を伝えて、家族と朝食を食べに大広間へと向かう。
大広間には8人の魔族がいてそれぞれ
父こと現魔王のアイルトン
母キュート
双子①ララとシュリ
双子②ハルとアキ
妹シュヴィだ。
俺はこの家族の長男である、他にも上に二人姉がいるそうだが今は冒険者として旅に出ているそうだ。
食事会で今までの籠りがちだったことへの謝罪とこれからの展望を伝えた。
家族はみんな俺を受け入れてくれてひとまず家族と仲良くなるという目標は達成できた。
朝食後に父アイルトンに呼ばれ地下室へと向かう。
そこで継承された魔王の力について尋ねられるのだが、力の使い方はおろか本当に継承されているのかもわからないほどに俺は未熟であった。
俺の不安に気づいてかアイルトンは俺の体に魔力を流して活性化させた。
そうして打ち込んだ魔力のこもった攻撃は俺の初めての魔法である。
次代の魔王としてのそして平和の形成者として力の使い道は魔族、人すべての生き物を守るためであると決めて守る事を決意した。
地下室から出ると妹のシュヴィが出迎えてくれた。どうやら庭で遊びたいそうだ。
ひとしきり遊んだ後に二人で村へと向かった。その道中には美しい花々が咲いていた。
門番と話した後、村で探索していると魔獣警報と呼ばれるものが発令された。
ここで、魔獣とは放逐できる魔物と異なって、魔石から力を得て動きたびたび人里を襲う害獣なのだと知る。
シュヴィと近くの店へ避難して状況を確認する。
3匹の狼型の魔獣を討伐するために繰り出された3人のリザードマン風の男たち。
男たちは槍を持っているが狼にはまるで聞いていない様子だ。
しばらくすると戦況は一変して死者が出る一歩手前といったところだ。
俺には魔王の力がある、ここで見殺しにすることはできないと思って飛び出す。
魔獣へ向かって初期魔法の火球を繰り出す。火球は着弾して3匹のうち2匹を遠くへ飛ばすことができた。
ふさふさの毛皮が火球のせいでよく燃えているのがわかった。
俺は次いで男の槍を使いファイアランスにして2体の狼を狩る。
魔石は粉々になり、狼を模っていた肉体も消えてしまう。
残った1匹の魔獣の額には魔法陣が描かれていて、そこからはツノが生えてきた。
ツノの先端に雷が集まり周囲は曇り始める。近くに雷が落ちて落下点からは雷を纏った狼が現れる。どうやら肉体はなく実体もないようだ。
相手が先手を打ち、俺の腹部にツノが貫通する。今では即死だったのではないかと考える。しかし、俺は生きていてお返しにツノを折ってやることに成功した。ツノを折ったことにより雷を纏った狼は消えて1体1の状況になった。
謎の声が聞こえてきて力の使い方はイメージであったことを思い出す。
そうしてリザードマン風の男たちの想いや村の住人の想いそして死にたくないという想いを込めて思いっきり殴った。
狼は10メートルほどまで飛ばされてクタッと横になる。
弱りきった体で何かを守ろうとしていることに気づく。
しばらくすると魔石のエネルギーが尽きて模っていた肉体は消え失せる。
その場には魔石と魔獣の残した卵があった。
俺はハッと気づく、力の使い道は人や魔族その他の生物を守るために使う、そして平和を希求すること。しかし、今回の件はどうであろうか?
村を荒らしていたとはいえ卵を守ろうとする母魔獣を殺したことはリョウスケの中で非常に重くのしかかった。
罪悪感に苛まれているところに妹のシュヴィがやってきていつもとは違った、お姉さんのような口調で優しく諭される。
そうやって誰かを守るためには誰かを傷つけなければいけない。そういった真理を知るきっかけができた。
俺は疲れ果ててどうにも家まで帰る余裕はなかった。
村の宿を借りてシュヴィと泊まろうとした。
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