第1話:異世界に転生してしまったようです

「お兄様、シュヴィを抱っこしてくださいまし?」

幼い少女が俺に上目遣いで要求してくる。


彼女はふわふわとしたショートの金髪に色白い肌によく映える青色のワンピースを着ている。


しかし、俺には妹がいるのだが*シュヴィ*なんて名前でもなければ金髪でもない。


それに周囲を見渡すとどうにも知らない家具だらけだ。

おまけに立った時の視点が低いときた。


もしかすると俺は異世界とやらに転生してしまったのだろうか。。


俺の名前は井原リョウスケ。12月で17歳になる。

5歳下の妹と10歳下の弟がいて、2人ともとてもかわいい。


確か昨日は弟のケンタから勧められたVRゲームを徹夜でやって自室で寝たはずだ。


しみじみと思い出しているとふいに少女は言う。


「お兄様?」


訝しむシュヴィと名乗る少女は人差し指を淡い唇に当てて首を傾げた。


「あぁ、悪い。ちょっとぼーっとしてた。」


俺は手慣れた感じでその少女を抱き上げた。


「きゃ!きゃはっ!」


少女のひまわりのような笑顔につられて俺も少し笑みが溢れる。


しばらくして、ふと窓から外を眺めるとあたりに大きな庭がある。


庭につながる道を辿ると、街のようなものが見えた。


見知らぬ風景、視点の低さ、知らない家具、知らない妹がいる。


鏡はないようだがおそらく自分の姿も変わっているだろうと感じるほどに違和感があった。


俺は異世界に転生してしまったのだ。


ところでさっきは現世での兄弟と少女が重なって見えたためにシュヴィと自称する少女を自然と抱っこしてしまったのだが、大丈夫だろうか。


俺が本当の兄じゃないと気づけばきっと軽蔑するのだろうな。


それにこのなつきようは*前*のお兄ちゃんに相当愛されていたに違いない。


幼い頃のショックはずっと残るはずだ。


俺は絶対に正体を悟られてはいけないと決意した。


「リューク様、お食事の準備ができました。」


(この部屋には俺と少女しかいないし、俺の名前はリュークというのだろうな。)


呼ばれた方を見ると、白黒のツートン割烹着(メイド服)を着ている女性がいた。


彼女をよく見ると背中には翼が生えており、ツノがあったり尻尾があったり明らかに人間ではない。


しかし、どちらも白黒ツートンとよく似合っているじゃないか。やはりメイドはこうじゃないと。


「お兄様、早く行こう!シュヴィはお腹空いているのです!」


半ば強引に手を引かれて食事の場所へと連れていかれる。


さっき窓を見た時にも思ったのだが日が暮れ始めていたことからきっと今から食べるのは夕ご飯なんだろうなと思いつつ食卓に向かう。


それに、おそらくここは天井の高さや家具の雰囲気、使用人がいることから裕福な家なのだろう。









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