魔王兼お兄ちゃんのリョウスケが異世界で慕われて銅像になる話

蒲生 聖

一章

プロローグ

その男はくつくつと笑って剣先を向けた。


「魔王よ、あっけない最後だったな。死して罪を償え。」


男が剣を振り、鮮血が宙を舞った。


ー end 「極悪魔王と勇者」 ー


「ケンタ!このゲームすごく面白かったぞ!!」


「そうでしょ!僕は*最悪の魔王*を勇者が倒すクライマックスのシーンが特に面白いと思ったよ。」


「お兄ちゃんはどう?」と首を傾げている弟を横目にゲームの内容を振り返る。


このゲームはよくある異世界が舞台で、暴虐の限りを尽くす魔王とそれを倒す勇者の物語の少年向けゲームなのだが、やけにキャラ設定が重苦しい。


例えば、*最悪の魔王*だが幼少期に呪いを庇ったせいで周囲の人間の感情が伝わってしまうようになり、人々の嘘に苦難し、最終的には人間不信に陥ってしまい暴虐の限りを尽くすようになることだ。


「俺は不器用な魔王に寄り添うサキュバスとダークエルフのシーンが好きだったな。」


「えー魔王なんか悪いやつじゃん!たくさんの人をやっつけてるんだよ??」


弟のケンタは小学2年生であり、そういった細かい設定には目を向けてやれないんだろうと思った。


「いつか魔王の気持ちが分かる時が来ると思うよ。」


俺はそう伝えたあと疲れていたせいか自室に戻って早々寝た。


転機は急に訪れた。


窓から光が仄かに差してきたと感じて目を覚ますとそこは現世ではなかった。

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