24 Side 王
大勢は好きではないと伝えると、ルウは誰も誘わずに祭りを案内してくれた。
「大きなお祭りではないけど、意外と人が集まるでしょう? はぐれないようにしないとね」
浮き浮きした様子が愛らしい。何を食べようか迷いすぎる!と困っているようだ。
「ロカくんは何が食べたい? どうせなら食べたことがないものがいいかなぁ」
「ルウの好きなものが食べてみたい」
「うーん」
いくつか食べ歩き出来るものを買った彼女は用意されていた椅子に座った。周りでは親子達が同じように座っていた。
賑わっているので肩が触れそうになる距離まで距離を詰められる。
「これ揚げ立てで美味しいと思うよ」
楕円形の食べ物を差し出されたので食べてみたが、確かに美味い。揚げているから芳ばしいのだなと考える。
「美味しいもの食べると幸せな気持ちになるよね」
「俺の故郷の美味いものもいつか食べてもらいたい」
「へぇー、どんな食べ物?」
幼い頃に食べた菓子を説明すると目を輝かせていた。
幸せそうな表情は見ていて飽きないし、もっと見ていたいと思う。
ふと至近距離で目が合い、じっと見つめれば恥ずかしそうに逸らされた。
「ロカくんは格好良いから、そんなに見つめられると照れちゃうよ」
「ルウが綺麗だからずっと見ていたい」
「へっ!?」
大声を上げて立ち上がったルウは周りからの視線に気付いて「あ、えっと、ごめんなさい」と頭を下げた。
「びっくりした、誰にでもそんなことを言っちゃ駄目だよ?」
「誰にでも言わない。ルウだから」
「……えっと、うーん」
初めて好意を伝えたからか、慌てふためいている。これで少しでも俺を男として意識してくれるだろうか。
「ごめん、こういうの慣れてないから! 大袈裟に反応してごめんね」
忌々しいあの男に“愛している”とまで言われているのに、いちいち照れてしまうのか。
もっと困らせてみたくなる。
でも、もう
「お前が全て忘れてしまっても俺は愛している」
小さな呟きに「ん?」とルウが首を傾げた。
「なんでもない」
「そう?」
「ああ、何も問題ない」
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