17 side 王
頼まれれば何でも快諾してしまう。本人はちっとも苦に思っていないようで、特に見返りも求めることなくこなしている。
傍目から見れば騙されていることも多い。
忙しいと言いながらそいつは面倒だから押し付けているだけだと分かっていないのか?
大人からの信頼は厚いようだが、それも都合の良いように扱われているだけだ。
疑いもせずに笑顔を振り撒いている。
少女くらいの年齢になれば、魂に濁りがあるのは珍しくない。
しかし、彼女には一切それがない。
もっとずる賢く生きればいいのに、真っ直ぐにしか生きられないらしい。
見ていて面白味はないのに目が離せなくなるのは何故なのか。
我楽多が気紛れに現し世を映し出すことが嫌ではないと思ってしまっている。
それどころか、俺の意思で見ることが出来れば良いとすら思い始めている。
この気持ちは一体なんなんだ?
戸惑いを持て余しているうちに少女は制服を卒業し、周りの環境が変化していく。
周りの人間に影響を受けてか垢抜けていく彼女の美しさに気付く男は少なくなかった。以前と変わらずお人好しで心根の優しい娘なので、いつ男に捕まり騙されるか分かったもんじゃない。
親しげに近付く男共に苛立ちを覚える。
その娘はお前達が汚していい魂ではない!
そして、指を咥えて見ているだけしか出来ない俺と違い、一人の男が彼女と親密になり始める。
『君のことを愛しているんだ』
恥ずかしそうに見つめ合う二人。彼女も満更ではなさそうだ。
男の魂はほとんど濁りがなく、二人が並んでいても釣り合っているだろう。
舌打ちをする、微笑ましいことなのに面白くない。
男の言葉が何よりも忌まわしいものに聞こえた。
ここまでくれば気付かないほど鈍感ではない。
俺は彼女をーー
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