15
「婚儀が終わってしまえば黙る者も多いと思う。今回のことが見せしめになって手を出してくる愚か者は少ないだろうし、警備を強化する。もう二度とあんな目には遭わせない」
だから隣にいてくれないか?と真剣な表情で切願される。その様子に胸が一杯になるけれど疑問も浮かぶ。
「どうしてそこまで私を望むの?」
周りに反対されてまで選んでくれる理由がわからない。
「俺はここに辿り着く前のお前を知っている。嫌になるほど
「……」
「理解できないという顔だな」
「……私は何も覚えていない、それは別人ということにならないのですか?」
「魂の本質は同じだから問題ない」
「うーん?」
首を傾げる。
冥界の王であるロカだから分かることなんだろうか?
「やっとここまで来たんだ。生涯離してやるものか」
琥珀の瞳が怪しく光る。
その瞬間、何故だか分からないけれど“もう逃げられない”と頭に過った。
「……あれ?」
逃げる? ロカから?
逃げる必要があるのだろうか?
ズキズキと頭が痛み始める。何も思い出せないのに、私はこの感覚を知っている……?
「顔色が悪い。あんな思いをしたのだから無理もない。もう何も思い出そうとしなくていい」
「……うん」
確かに今日は疲れた。
そのせいで頭痛がするのかも。考えるのも急に億劫になってきた。
「ずっと側にいる、おやすみ」
優しい声に誘われて、私の意識はそこで途切れた。
こうして違和感の正体に気付けぬまま、婚儀の日を迎えることになる。
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