13

「ごほ…っ」布を取り出し咳き込む私の背中を王が撫でる。涙と震えが止まらず、息も苦しくなってきた。上手く呼吸が出来ない。


「ゆっくり息を吐くんだ」


大きな体に包まれる。

声はとても優しいのに表情は険しいものだった。鋭い視線を横に向けると、


「この男は牢に入れておけ」


兵たちにカドを連れて行くように命じた。


「……生きてる?」

「殺してはいない。……簡単に死なせはしない」


怒りが伝わってくる言い方で、兵たちに緊張が走っているようだった。

室内に誰もいなくなってから口を開く。


「……帰って来るの早かった」

「胸騒ぎがしたからな」

「助けてくれて、ありがとう。ロカがいなくて怖かった……!」


ぼろぼろとこんなに泣いたのは初めてかもしれない。安心からか意識が遠のきそうになるけれど、まだ本人から聞いていないことがある。


「……レーラさんと何があったか聞かせてください」

「お前が心配するようなことは何もない。今はゆっくり休むんだ」

「嫌だ、聞かせて」


ロカに向かって嫌というのは初めてかもしれない。琥珀の瞳が揺れた後、「わかった」と小さく呟くのが聞こえた。


不思議なもので、どんなに危険な経験よりもロカが私以外の女性に触れ愛してしまうことが怖いんだ。したくもない想像をして唇を噛む。


「お前の部屋に移動しよう。ここには長居させたくない」


確かにこの部屋は血生臭いし、先程までのことを鮮明に思い出してしまう。あと、先に身を清めたほうがいいだろう。


「隠し事しないで話してね」

「あの女との間に隠すようなことは何もない」


憂鬱だけど腹を括ろうとしている私に対し、なぜか余裕のある様子を見せられて首を傾げる。




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