8
今日も
「え? 私にお客様ですか?」
伝えられたことは来客を知らせるもので、目を丸くする。知人もいない私に会いに来る人など覚えがない。
「えっと、ヨウカはどこに?」
ヨウカに確認を取りたい。勝手なことはしない!と口煩く言われているからだ。
「彼女は女中頭に呼ばれています」
「……うーん」
女中は時間を気にしているようでそわそわしていた。ヨウカがいないのであれば仕方がない。
「案内してください」
通されたのは客間ではあるが埃臭い部屋だった。
異変に気付く、中には誰もいない。
「お客様はどこに?……きゃっ!」
背中を押され、床に転がった。
振り返れば扉は既に閉まっており、外から鍵が締まる音が響いた。
「何を……!」
「あなたが邪魔なのよ」
冷たい声だ。騙されたんだ……!
「大声を出してもここに近づくものはいない。誰かに見つけてもらえるといいわね」
「こ、こんなことロカが許すと?」
声が震える。
「あの王には失望したわ。貴方のような女に誑かされるなんて」
失望……。
「ご存知ないようだけど、王は辺境で起きた事故のために出掛けたわ。数日は戻ってこないんじゃないかしら」
「そんな」
「たとえ私が処罰されても、貴方を受け入れることが出来ない人間は少なくない。己が可愛いならこの婚約は破棄することね」
「……」
最近こんなことばかりだ。
女中はいなくなったようで何も言わなくなったし、扉を叩いても何の反応も返ってこなかった。
部屋の中を見回しても扉を壊せるような物はないし、暗くなれば灯りもないようだ。窓からの脱出も高さを考えると難しそうだし、そもそも窓が開きそうにない。
窓枠や家具に埃が溜まっていて、随分と使われていない部屋のようだ。
「どうしよう、ロカ……」
段々と空が暗くなり始める。心細くなり王の名前を口にするが届くはずもない。
首元のチョーカーに触れながら蹲る。
「助けてよ」
ロカの側を離れることを考えるけど、こんなことをされても「それは嫌だ」と思っている自分に気付く。
あの優しく撫でてくれる手も、名前を呼んでくれる声も、綺麗な琥珀の瞳も、失ってしまうことを考えると怖い。
……だけど、私が側にいることは許さないと
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