「レーラ様のことですか?」


どんな人なのかと聞けるのはヨウカくらいしかいなくて尋ねてみれば驚かれてしまった。


「そんなことを聞いてくるなんて珍しいですね」

「……うん」

「もしかして鉢合わせたとかでしょうか」

「……婚約者候補って」

「ああ、そんなことまで」


ヨウカの眉毛が八の字に下がる。

入れてくれたお茶に息を吹きかけながら、ぽつりぽつりと話を続ける。


「王は私に何も話してくれない。レーラさんって……どんな人ですか?」

「うーん、幼馴染みと言うんでしょうか? あの二人の関係性を幼馴染みというのも何か違う気もするのですが……。幼い頃からの付き合いというのは間違いないです」

「うん」

「一言で言えば才色兼備な方ですよ。憧れている男性は少なくないようです」

「すごいですね」


二人の子どもの頃の逸話も聞いたけど、何をしても優秀だったようだ。

きらきらと輝いていたレーラと違い、お茶に映り込む自分の顔はなんて地味なんだろう。


「レーラさんのほうが妃として認められそう……」ぽつりと呟く。


「ん? 何か仰いましたか? 聞き逃してしまって」

「うーん、なんでもない」


誤魔化すけど、何度もあの二人が並んだ姿を思い出してしまう。

たとえば、レーラが花嫁なら王が期待することもそつなくこなしてしまうんじゃないか。私は落ちこぼれだから何も望まれないし、話して貰えないんじゃないか。


鬱々とする気持ちを吹き飛ばせないのは、私に何もないからだ。王が愛してくれているから価値があるだけで、気持ちが離れてしまったら……どうなる?

考えたこともなかった。王のことを信じていれば何の不安もなかったから。


このまま妃になっても良いんだろうか?


気持ちが負けそうになっている……。

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