第16話 次元喰らいの正体と脅威

大陸統一から数ヶ月が経過した秋の終わり頃、寛人たちは新たな首都エターナリアで会議を開いていた。巨大な円卓を囲み、各国の代表者たちが集まっている。


「では、統一後の経過報告を始めましょう」


寛人が口火を切る。彼の隣には、リリア、ミーナ、エリザベート、フレイヤ、そしてシャオメイが座っていた。


各国の代表者が順に報告を始める。

貿易の活性化、文化交流の促進、科学技術の発展——統一後の世界は、着実に前進しているようだった。


しかし——


「むげんちゃん、外が...」


突如、ミーナが窓の外を指差す。


全員の視線が窓に向けられる。

そこには、異様な光景が広がっていた。


空が、歪んでいる。

まるで鏡が割れたかのように、空間そのものが裂けていくのだ。


「な...何が起きてるんだ?」

イグニスが立ち上がる。その声には、明らかな動揺が混じっていた。


「フレイヤ、これは...」

寛人がフレイヤに目を向ける。


フレイヤの表情が、見たことのないほど厳しくなる。


「来ました...ついに来てしまったのです」


「何が?」

リリアが焦った様子で尋ねる。


フレイヤは深く息を吐き、そして言った。


「"次元喰らい"...全ての世界を飲み込もうとする存在です」


場内が騒然となる。


「ちょ、ちょっと待って」

シャオメイが声を上げる。

「次元喰らいって、一体何なの?」


フレイヤは静かに説明を始めた。


「次元喰らいとは、異なる次元から来る存在です。彼らの目的は、あらゆる世界を"消費"すること」


「消費?」

エリザベートが眉をひそめる。


「はい。彼らにとって、私たちの世界はエネルギー源なのです。世界を丸ごと飲み込み、そのエネルギーを糧にして、さらに別の世界へと移動する...」


「そんな...」

リリアが言葉を失う。


「彼らの正体は、私たちの理解を超えた存在です。形のない意識の集合体とも言えるでしょうか」


寛人が立ち上がる。


「どうすれば止められる?」


フレイヤは寛人を見つめ、そして言った。


「...簡単ではありません。しかし、方法が全くないわけではないのです」


全員の視線がフレイヤに集中する。


「次元喰らいには、"核"とでも呼ぶべき中心的存在がいます。その核を倒せば、他の存在も消滅するはずです」


「核か...」

寛人が腕を組む。


「でも、どうやってその核を見つければいいの?」

ミーナが不安そうに尋ねる。


フレイヤは目を閉じ、何かを感じ取るように静止する。

そして——


「...北の果て」


「え?」


「核は、この大陸の北の果てに現れるでしょう。そこが、次元の歪みが最も激しい場所になるはずです」


寛人は決意に満ちた表情で言った。


「分かった。俺たちで行こう」


「待って」

イグニスが声を上げる。

「お前たちだけで行かせるわけにはいかん。我々も協力しよう」


他の代表者たちも同意の声を上げる。


寛人は感謝の気持ちを込めて頷いた。


「ありがとう。みんなの力を合わせれば、きっと勝てる」


会議は急遽、作戦会議へと変更された。

各国の特性を生かした役割分担が決められ、準備が始まる。


「水晶王国は、魔法障壁の構築を担当します」

「炎竜帝国は、前線での戦闘を引き受けましょう」

「闇影同盟は、情報収集と後方支援を」


そして——


「俺たちが、核との直接対決に向かう」


寛人の言葉に、仲間たちが頷く。


準備の整った一行は、北へと旅立つ準備を始めた。

しかし、その前に寛人は一つの決断をする。


「みんな、俺には言っておきたいことがある」


仲間たちが、寛人に注目する。


「この戦い...勝てる保証はない。だから、ここで降りたい者がいても構わない。誰も責めたりはしない」


一瞬の沈黙。

そして——


「何言ってるの、むげんちゃん!」

ミーナが真っ先に声を上げる。

「ミーナ、絶対についていくよ!」


「そうよ。ここまで来て降りるなんて、冗談じゃないわ」

リリアが力強く言う。


「私も、最後まで共に戦わせていただきます」

フレイヤが静かに、しかし決意を込めて言った。


「ふん、逃げ出すくらいなら、最初からついて来なかったわ」

シャオメイが不敵な笑みを浮かべる。


「私の剣は、あなたのためにあります」

エリザベートが真摯な表情で言う。


寛人は、感動で言葉を失う。


「みんな...ありがとう」


彼の目に、涙が光った。


「よし、じゃあ行こう。俺たちの...いや、この世界の未来のために」


こうして、寛人たち6人は、世界の命運を賭けた最後の戦いへと出発した。

彼らの前には、想像を絶する困難が待ち受けているに違いない。


しかし、彼らの心は一つ。

どんな試練が待っていようと、共に乗り越えていく——

その決意が、彼らの瞳に燃えていた。

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