第10話 王国内部での潜入活動

エリザベートの協力により、寛人たちは王城内部への潜入を果たす。

夜の帳が下りた王城は、昼間の威圧的な雰囲気とは打って変わって静寂に包まれていた。


「これが配置図よ。赤い印のところが、重要書類の保管場所」


エリザベートが薄暗い廊下の隅で、小さな地図を広げる。


「よし、分かった」


寛人は頷く。彼の目には、決意の色が宿っていた。


「私は外で見張りを」リリアが弓を構える。


「ミーナは小さいから、狭いとこ行けるよ!」

ミーナが元気よく宣言する。


作戦を練り、彼らは行動開始。

寛人とミーナは書類保管室に向かい、リリアとエリザベートは外で見張りを務めることになった。


廊下を進む寛人とミーナ。

寛人の鋭敏な感覚が、巡回する衛兵の足音を捉える。


「ミーナ、隠れて」


寛人の囁きに、ミーナはすぐさま寛人のポケットに潜り込んだ。


ゆっくりと近づいてくる足音。

寛人は壁の影に身を潜める。


カチッ、カチッ...


衛兵が通り過ぎるのを待つ数秒が、まるで永遠のように感じられた。


「ふぅ...」


危機を脱し、二人は目的地へと向かう。


ついに書類保管室に到着した寛人とミーナ。

しかし、そこには予想外の障害が待っていた。


「魔法の封印...」


寛人が呟く。扉には複雑な魔法陣が刻まれ、簡単には開かないようだ。


「むげんちゃん、ミーナに任せて!」


ミーナが自信たっぷりに言う。

彼女は小さな袋から光る粉を取り出し、魔法陣に振りかけた。


キラキラ...


すると、魔法陣が徐々に薄れていく。


「さすがだな、ミーナ」


寛人が感心したように言う。


「えへへ、褒められちゃった♪」


ミーナが嬉しそうに頬を染める。


二人は慎重に部屋に入り、書類を探し始める。

そこで彼らが見つけたものは——


「これは...」


魔王軍との密約書。

そして、民衆から搾取した富の分配計画。


「最悪だね、むげんちゃん」


ミーナが悲しそうな顔をする。


「ああ。でも、これで証拠は揃った」


寛人が書類を収納しようとした瞬間——


「誰かいるぞ!」


見張りの声が響く。


「やばっ!」


寛人は咄嗟にミーナを抱え、窓から飛び降りる。


「きゃあああ!」


「大丈夫、ミーナ。俺が守るから」


寛人の腕の中で、ミーナの頬が赤くなる。


三階の高さから落下する寛人。

しかし、彼の並外れた身体能力のおかげで、軽々と着地する。


「無限!大丈夫か?」


リリアが駆け寄ってくる。


「ああ、なんとか」


「証拠は?」


エリザベートが緊張した面持ちで尋ねる。


「ばっちりだ」


寛人がニヤリと笑う。


四人は急いで待ち合わせ場所へと向かう。

しかし——


「待ちなさい」


聞き覚えのある声。

振り返ると、そこにはエリザベートの姿があった。


「君か。良かった、心配したぞ」


寛人が安心したように言う。

しかし——


「申し訳ない」


エリザベートの背後から、大勢の兵士が現れた。


「エリザベート...まさか」


寛人の表情が曇る。


「私は...国を守るためならどんなことでもする。たとえそれが、魔王軍と手を組むことだとしてもね」


エリザベートの目に、悲しみの色が浮かぶ。


「君を...信じたのに」


寛人の声に、怒りと悲しみが混じる。


「さあ、観念しなさい」


エリザベートが剣を抜く。


寛人は、リリアとミーナを後ろに下がらせる。


「二人とも、逃げるぞ」


「え?でも...」


「大丈夫」


寛人が微笑む。


「俺が、全員相手してやる」


その瞬間——


ビュンッ!


寛人の姿が消えた。


「な...何!?」


エリザベートが驚きの声を上げる。


次の瞬間、兵士たちが次々と倒れていく。


「うおおおっ!」

「何が起きてる!?」


混乱する兵士たち。

そして——


「エリザベート」


背後から声がする。


振り向くと、そこには寛人の姿があった。


「どうする?まだ戦うか?」


エリザベートは剣を構えたまま、震える声で言う。


「なぜ...なぜそこまでの力を...」


「これが俺の使命だからさ」


寛人は真剣な眼差しでエリザベートを見つめる。


「この世界を...守るための力なんだ」


エリザベートの手から、剣がこぼれ落ちる。


「...負けた。あなたの勝ちよ」


彼女はゆっくりと膝をつく。


「エリザベート...」


寛人が手を差し伸べる。


「まだ間に合う。本当の意味で、この国を良くする方法があるんだ」


エリザベートは顔を上げ、寛人を見つめる。

そして——


「...教えて」


彼女の目に、新たな決意の色が宿る。


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