第9話 エリザベートとの出会いと同盟

鉄槌王国の闇を知った寛人たち。

彼らは国を変えるための手がかりを探していた。


「王国軍の中にも、国王に反発する者がいるらしい」

「シルバーフォックスって呼ばれてる女軍人がいてな...」


酒場で聞いたその噂が、彼らの次の行動を決定づけた。


「このシルバーフォックスとやらに会えれば、何か分かるかもしれないわね」


リリアが提案する。


「うん、その人きっと良い人だと思う!」


ミーナも賛成の意を示す。


寛人は頷いた。

「よし、じゃあ今夜、兵舎に忍び込もう」


夜の帳が下りた頃、寛人たちは王城近くの兵舎に忍び込んだ。

月明かりを頼りに、彼らは慎重に動く。


「むげんちゃん、あそこ!」


ミーナが小さな声で告げる。

一つの部屋から、かすかな明かりが漏れていた。


寛人たちがその部屋に近づいた瞬間——


「誰だ!」


鋭い声と共に、一振りの剣が寛人の首筋に突きつけられる。


「おっと、そう警戒しないでくれよ」


寛人はゆっくりと両手を上げる。


月明かりに照らされたその人物は、シルバーのショートヘアを持つ凛とした美女だった。


「あなたが...シルバーフォックス?」


「...何用だ」


女性は剣を下げないまま問う。


「話があるんだ。この国のこと...そして魔王軍のことでね」


その言葉に、女性の目が細くなる。


「...私についてきなさい」


彼女は寛人たちを小部屋に案内した。


「私はエリザベート。鉄槌王国軍の大佐だ」


「俺は無限寛人。こっちはリリアとミーナ」


自己紹介を済ませた後、エリザベートが切り出す。


「で、何の用件だ?」


「率直に言おう。俺たちは、この国を変えたいんだ」


寛人の言葉に、エリザベートの目が見開く。


「...狂気の沙汰だな」


「そうかもしれない。でも、君も同じことを考えてるんじゃないのか?」


一瞬の沈黙。

そして——


「...証拠がある」


エリザベートが小声で言う。


「国王が魔王軍と手を組んでいる証拠だ」


寛人たちの表情が引き締まる。


「見せてもらえるか?」


エリザベートは慎重に周囲を確認し、隠し扉を開け書類を出す。


「これを見てごらん」


寛人たちは息を呑んだ。

そこには、国王と魔王軍との密約の詳細が記されていた。

民からの搾取、若者の強制徴用、そして魔王軍への協力...全てが明らかになっていた。


「これは...」


リリアが言葉を失う。


「酷すぎる...」


ミーナの声が震える。


寛人は黙って資料に目を通し、そして顔を上げた。


「エリザベート、協力してくれるんだな?」


「ああ。だが、一つ条件がある」


「なんだ?」


「もし本当にこの国を変えられるなら...私を新しい国の軍の長にしてくれ」


寛人は微笑んだ。


「いいだろう。約束する」


エリザベートの目に、希望の光が宿る。


「ありがとう...本当に、この国を変えられると信じていいのかい?」


寛人は真剣な眼差しで応えた。


「ああ、必ず。俺たちの力を見せてやるさ」


こうして、エリザベートという強力な同盟者を得た寛人たち。

彼らの反乱計画は、新たな段階に入る。


しかし、彼らはまだ知らない。

この決断が、どれほど大きな波紋を呼ぶことになるのかを——。





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