神様から無限の力をもらったので、異世界で無双して世界を救います！

第8話 鉄槌王国の実態調査

数日間の過酷な旅の末、寛人たちはついに鉄槌王国の首都・鉄槌城下町に到着した。

巨大な城壁に囲まれた都市は、その名の通り鉄の槌のような威圧感を放っていた。

「すごい...こんな大きな街、初めて見たわ」

リリアが目を丸くする。彼女の故郷の村とは比べものにならない規模だ。

街は活気に満ちていたが、どこか暗い影も感じられた。

通りを歩く人々の表情は硬く、時折兵士たちが厳しい目つきで巡回している。

「ねえむげんちゃん、あの人たち怖そう...」

ミーナが寛人の耳元でささやく。彼女は人目を避けるため、小さな妖精の姿で寛人のポケットに隠れていた。

「ああ...ここは用心しないとな」

寛人は周囲を警戒しながら、静かに言った。

三人は変装して街を歩き、情報収集を始める。

まず向かったのは、地元の酒場だった。

「ここなら色々な話が聞けるはずよ」

リリアが提案し、寛人も同意した。

酒場の中は煙草の煙が立ち込め、酒に酔った男たちの喧噪で溢れていた。

寛人たちは目立たないよう、隅の席に座った。

しばらくすると、衝撃的な会話が耳に入ってきた。

「聞いたか？また処刑があるらしいぜ」

「ああ...今度は誰なんだ？」

「魔王軍に反対したっていう商人らしい」

寛人たちは顔を見合わせる。

「ひどい...」

リリアが拳を握りしめる。

「むげんちゃん、なんとかしなきゃ」

ミーナがポケットから小さな声で訴える。

寛人は黙って考え込んでいた。

（これは予想以上に深刻な状況だ...）

その後も街の様子を探るうち、彼らは鉄槌王国の闇を知ることとなる。

重税。強制徴用。密告奨励。

そして、魔王軍との繋がり。

市場では、痩せこけた子供たちが物乞いをしている姿が。

裏通りでは、兵士たちが商人を脅している光景が。

「これは...もはや国家じゃない。暴政そのものだ」

寛人の表情が険しくなる。

その時、街の中央広場から悲鳴が聞こえてきた。

「あれは...」

三人が駆けつけると、そこには痛ましい光景が広がっていた。

老人が兵士に殴られ、倒れている。

周りの人々は恐れて近づけずにいた。

「金を出せ！税は聖なる義務だろうが！」

兵士が老人を蹴ろうとした瞬間——

ガシッ

「え？」

兵士の足が、何者かに掴まれていた。

「やめろ」

寛人の冷たい声が響く。

「な...何だ貴様は！」

兵士が剣を抜こうとするが——

ビュンッ

一瞬で、兵士は宙を舞っていた。

ドゴォッ！

壁に叩きつけられ、兵士は気絶する。

広場が静まり返る。

「大丈夫ですか？」

寛人が老人に手を差し伸べる。

「あ、ありがとう...」

その瞬間、人々から歓声が上がった。

「やった！」

「あの悪徳兵士やっつけてくれた！」

しかし、寛人の表情は厳しいままだった。

（これは...もう、看過できない）

彼の中で、ある決意が固まる。

「リリア、ミーナ」

「なに？」

「うん、なーに？」

寛人が二人を見つめる。

「俺は...この国を変える。どう思う？」

リリアとミーナは一瞬驚いたが、すぐに頷いた。

「当然でしょ。私も協力するわ」

「むげんちゃん、ミーナも手伝う！」

寛人は微笑んだ。

「ありがとう。じゃあ...作戦会議だ」