第7話 旅立ちと道中の冒険
朝日が昇る頃、寛人たちは村を出発した。
リリアとミーナが同行している。
「いよいよ旅が始まるわね」
リリアが少し緊張した面持ちで言う。背中には弓と矢筒、腰には短剣を下げている。
「むげんちゃん、楽しみだね!」
ミーナは相変わらず元気いっぱいだ。小さな背負い袋を背負っているが、その中身は妖精の魔法の粉だという。
「ああ、楽しみだよ」
寛人は微笑みながら歩を進める。
しかし、その瞳の奥には決意の色が宿っていた。
(魔王軍の本拠地...鉄槌王国か)
村人から聞いた情報によると、この地方を支配しているのは鉄槌王国。
そして、その国は魔王軍と通じているらしい。
「ねえ、寛人」
歩きながら、リリアが声をかけてきた。
「なに?」
「私たち、どこまで行くの?」
「そうだな...まずは鉄槌王国の首都を目指そう」
寛人の言葉に、リリアとミーナは顔を見合わせた。
「首都!?そんな遠くまで行くの?」
ミーナが驚いた様子で尋ねる。
「ああ。魔王軍の動きを知るには、やはり中枢に近づく必要があるからな」
寛人の表情は真剣だ。
「分かったわ。私たちも全力でサポートするわ」
リリアが力強く頷く。
こうして、彼らの長い旅が始まった。
道中、彼らは様々な冒険を経験する。
まず最初に訪れたのは、深い森だった。
木々が生い茂り、日光さえ遮られるほどの鬱蒼とした森。
「む、むげんちゃん...ちょっと怖いよ」
ミーナが寛人の肩にしがみつく。
「大丈夫だよ、ミーナ。僕が守るからね」
寛人が優しく微笑むと、ミーナの表情が和らいだ。
しかし、その安心も束の間。
突如、巨大な蜘蛛の巣が彼らの行く手を阻んだ。
「きゃあっ!」
ミーナの悲鳴と共に、彼女は巣に捕まってしまった。
「ミーナ!」
リリアが弓を構える。
「待って、リリア!ミーナに当たったら危険だ」
寛人が制止する。
「じゃあ、どうすれば...」
その時、巨大な蜘蛛が姿を現した。
体長3メートルはあろうかという巨体で、幾つもの目が不気味に光っている。
「グルルル...」
蜘蛛が唸り声を上げる。
「任せて」
寛人が一歩前に出る。
ビュンッ!
寛人の姿が消えた。
次の瞬間、彼は蜘蛛の背中に乗っていた。
「おりゃあっ!」
寛人の拳が蜘蛛の頭部に炸裂する。
ドゴォッ!
衝撃波と共に、蜘蛛が地面に叩きつけられた。
「す、すごい...」
リリアが息を呑む。
寛人はすぐさまミーナのもとへ駆け寄り、巣を引きちぎってミーナを救出した。
「大丈夫?ミーナ」
「う、うん...ありがとう、むげんちゃん」
ミーナは涙目になりながらも、安堵の表情を浮かべた。
森を抜けると、今度は険しい山道が待っていた。
切り立った崖、狭い岩場の道。一歩間違えば奈落の底へ落ちかねない。
「くっ...」
リリアが足を滑らせる。
「リリア!」
寛人が咄嗟にリリアの手を掴んだ。
「あ、ありがとう...」
リリアの頬が赤くなる。
「気をつけてね。ここは本当に危険だから」
寛人の優しい言葉に、リリアは無言で頷いた。
山道を登っている最中、突如として魔物の群れが襲いかかってきた。
「みんな、気をつけて!」
寛人の警告と共に、戦闘が始まった。
リリアは的確な弓さばきで遠距離から魔物たちを倒し、ミーナは魔法の粉で魔物たちの動きを鈍らせる。
そして寛人は、圧倒的な力と速さで魔物たちを次々と撃破していく。
「はあっ!」
寛人の拳が大きな岩に叩き込まれる。
ドガァン!
岩が粉々に砕け散り、その破片が魔物たちを なぎ倒した。
「やった!全部倒したわ!」
リリアが勝利の声を上げる。
「さすが、むげんちゃん!」
ミーナも嬉しそうに寛人の周りを飛び回る。
寛人は少し息を整えながら、仲間たちに微笑みかけた。
「二人のおかげだよ。みんなで協力したからこそ、乗り越えられたんだ」
その言葉に、リリアとミーナの表情が柔らかくなる。
こうして幾多の困難を乗り越え、寛人たちは旅を続けた。
そして、ある日の夜——
彼らは小高い丘の上でキャンプを張ることにした。
満天の星空の下、キャンプファイアを囲んで三人は座っていた。
「ねえ、寛人」
リリアが真剣な表情で寛人を見つめる。
「なに?リリア」
「あなた...本当に人間なの?」
一瞬の沈黙が流れる。
「それが...正直わからないんだ」
寛人は夜空を見上げながら答えた。
「どういうこと?」
「俺は...神々から力を与えられたんだ。でも、その代償として...」
「代償?」
「...元の世界には戻れない」
リリアとミーナの表情が曇る。
「むげんちゃん...」
ミーナが寛人の肩に寄り添う。
「...そう。だから、あなたはこの世界で戦うしかないのね」
リリアの声に、わずかな震えが混じっていた。
「ああ。でも、それでいいんだ」
寛人は微笑む。
「だって、君たちがいるから」
その言葉に、リリアの頬が赤く染まる。
「べ、別にあんたのためじゃないんだからね!」
「あはは、わかってるって」
こうして、彼らの絆は少しずつ深まっていった。
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