第6話 村の危機:魔王軍の襲来

ミーナから魔王軍の気配を聞いてから数日が経過した。寛人は村の防衛体制を強化するため、リリアと協力して村人たちに簡単な戦闘訓練を施していた。


「そう、その調子よ!盾はもっと前に構えて!」


リリアの鋭い指示が、訓練場に響き渡る。


「はい、リリアさん!」


村人たちは必死に応えようとしている。その姿に、寛人は微笑ましさを感じつつも、迫り来る危機への緊張感を抑えきれずにいた。


「リリア、ちょっといいか?」


訓練の合間を縫って、寛人はリリアを呼び寄せた。


「どうしたの?」


「実は...」


寛人は、ミーナから聞いた魔王軍の気配について説明した。


「そう...やっぱり来るのね」


リリアの表情が曇る。


「あなたは、本当に私たちを守ってくれる?」


その問いには、不安と期待が入り混じっていた。


寛人は真剣な眼差しでリリアを見つめ返した。


「ああ、約束する。この村は絶対に守り抜く」


その言葉に、リリアの表情が和らいだ。


「...ありがとう。あなたを信じるわ」


二人が話している間にも、ミーナが慌てて飛んでくる。


「むげんちゃん!リリアちゃん!大変!」


「どうしたの、ミーナ?」


「魔王軍が...魔王軍が近づいてきてるの!」


ミーナの言葉に、寛人とリリアは顔を見合わせた。


「よし、みんなに知らせるぞ!」


寛人の号令で、村中に警報が鳴り響く。


「敵襲だー!」

「魔王軍が来たぞ!」


混乱する村人たち。しかし、寛人たちの訓練の成果か、思ったよりも冷静に行動している。


寛人は急いで村の中央広場に駆けつけた。

そこには、すでにリリアとミーナの姿があった。


「来たわね、魔王軍」


リリアが弓を構える。


「むげんちゃん、準備はいい?」


ミーナが寛人の肩に止まる。


「ああ、万全だよ」


三人の前に、魔王軍の大軍が迫っていた。

鎧に身を包んだ兵士たち、巨大な魔獣たち、そして空を舞う魔導師たち。


その数、優に千を超える。


「くっ...こんな数、どう戦えば...」


リリアの表情に不安が浮かぶ。


「大丈夫、リリア」


寛人が一歩前に出る。


「僕に任せて」


寛人の目に、決意の光が宿る。

彼は深く息を吸い込み、そして——


「さあ、踊ろうか」


一瞬の静寂。

次の瞬間、寛人の姿が消えた。


ドゴォッ! バキィッ! ズガァーン!


信じられないスピードで、寛人が魔王軍の中を駆け抜けていく。

拳一つで鎧を着た兵士を吹き飛ばし、蹴りで巨大な魔獣を倒す。


「す、すごい...」


リリアが目を見開く。


「さすが、むげんちゃん!」


ミーナが歓声を上げる。


魔導師たちが必死に魔法を放つが、寛人にはまったく歯が立たない。

彼は魔法の弾をかわしながら、次々と魔導師たちを倒していく。


「くっ...こいつ、なんて化け物だ!」


魔王軍の将軍らしき男が叫ぶ。


「全軍、あの男に集中攻撃!」


寛人に向かって、無数の魔法と矢が放たれる。


「むげんちゃん!」


ミーナが心配そうに叫ぶ。


しかし——


ゴォォォン!


寛人の周りに、透明なバリアが形成された。

全ての攻撃が、まるで泡のように弾け散る。


「さて、そろそろ終わりにしようか」


寛人が右手を天に掲げる。

空に、巨大な魔力の渦が形成される。


「な...何だ、あれは!?」


魔王軍の兵士たちが恐怖に震える。


「はあぁぁぁっ!」


寛人の叫びと共に、魔力の渦が魔王軍めがけて降り注いだ。


ドォォォン!


大地を揺るがす衝撃。

埃が晴れると、そこには壊滅した魔王軍の姿があった。


わずか数分。

千を超える魔王軍は、寛人一人によってほぼ全滅させられていた。


「はぁ...はぁ...なんとか、な」


少し息を切らしながら、寛人が村に戻ってくる。


「信じられない...」


リリアがぽつりと呟く。


「あなた、本当に人間なの...?」


「むげんちゃん、すっごーい!」


ミーナが寛人の周りを飛び回る。


村人たちも、驚きと喜びの声を上げ始めた。


「勇者様だ!」

「私たちの村を救ってくださった!」


歓声が寛人に向けられる。

しかし、彼の表情は少し曇っていた。


(なんだろう...この違和感)


寛人は遠くを見つめる。

魔王軍の襲来。そして、その圧倒的な数。


(これは...序章に過ぎないのかもしれない)


彼の胸に、大きな使命感が芽生え始めていた。


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