第2話 異世界到着と村人との出会い

エターナリアの空は、寛人が知る地球のそれとは全く異なっていた。

二つの月が青く輝き、見たこともない星座が夜空を彩る。


「まさか本当に...異世界か」


寛人は深く息を吐き出した。周囲には果てしなく広がる草原。遠くには小さな村の明かりが見える。


(とりあえず、あの村に向かうしかないか)


歩を進めるにつれ、寛人は自分の体の変化に気づいた。

筋肉の一つ一つが生命力に満ち溢れ、全身から力が湧き上がってくる。


「これが...神々から与えられた力か」


好奇心に駆られ、寛人は軽く跳躍してみた。


ビュンッ!


「うおっ!?」


予想を遥かに超える跳躍力に、寛人は思わず声を上げる。

十メートル以上の高さまで簡単に飛び上がってしまったのだ。


「す、すげぇ...」


興奮冷めやらぬ寛人だったが、すぐに我に返る。


(そうだ、まずは情報収集だ)


村への道を急ぐ寛人。

しかし、その途中——


ガサガサッ


物音と共に、草むらから一匹の獣が飛び出してきた。


「なっ!」


寛人の目の前に現れたのは、地球の狼を大きくしたような姿をした魔獣。

赤い目をギラつかせ、牙をむき出しにしている。


(やばい、どうしよう...)


寛人が身構えた瞬間、魔獣が襲いかかってきた!


ガブッ!


「えっ?」


予想していた痛みはなかった。

寛人の腕に食らいついた魔獣の牙が、まるで柔らかいゴムのように弾かれたのだ。


「そっか、"不死身の肉体"か...」


寛人は安堵の息をつく。

そして、ゆっくりと魔獣に向き直った。


「悪いな。だけど、おとなしくしてもらうぞ」


ビュンッ


寛人の動きが見えなかった。

気づいた時には、魔獣の首筋を軽く押さえていた。


バタッ


魔獣は気絶したように倒れる。


「ふぅ...これで一安心」


寛人は倒れた魔獣を見つめながら、自分の力の大きさを改めて実感していた。


村の入り口に到着した寛人。

そこには二人の衛兵が立っていた。


「おい、見ない顔だな。どこの国から来た?」


緊張した面持ちで問いかけてくる衛兵。

寛人は一瞬躊躇したが、すぐに気を取り直す。


「あ、はい。俺は...遠くから来た旅人です」


寛人の言葉に、衛兵たちは怪訝な顔を浮かべる。


「怪しいな...」


一人が剣に手をかけた瞬間——


ドゴォッ!


突如、地響きと共に地面が揺れ始めた。


「な、何だ!?」

「ヤベェ!オーガの群れだ!」


衛兵たちの顔が青ざめる。

寛人が振り返ると、巨大な人型の怪物たちが襲来しているのが見えた。


「くそっ、こんな数、村じゃ太刀打ちできねぇ!」


衛兵の一人が叫ぶ。

その時、寛人の中で何かが目覚めた。


(よし、ここが俺の出番だな)


寛人は衛兵たちの前に立ちはだかる。


「お、おい!何をする気だ!」


「大丈夫です。僕に任せてください」


寛人の声に、不思議な説得力があった。

彼は右手を前に突き出し、呟いた。


「はっ!」


その瞬間——


ドォーン!


巨大な衝撃波が寛人の手から放たれ、オーガの群れを吹き飛ばした。


「な...何てことだ...」


衛兵たちは、目の前の光景を信じられない様子で呟いた。


寛人は、自分の力に少し驚きながらも冷静さを保っていた。

(なるほど、これが無限の力か...)


数十体いたオーガたちは、一瞬にして倒されていた。

村人たちが恐る恐る門の外に顔を出す。


「あ、ありがとうございます!」

「あなたは...いったい...」


感謝と驚きの声が、寛人に向けられる。


「いえいえ、たまたま通りかかっただけです」


寛人は照れくさそうに頭をかく。

その姿に、村人たちの警戒心が解けていくのが分かった。


「あなたのおかげで村が救われました」

「どうか、今夜は私どもの村でお休みください」


村長らしき老人が、寛人に深々と頭を下げる。


「村長!そんな怪しい奴を...」


衛兵の一人が抗議するが、村長は静かに手を上げて制した。


「彼が怪しい者なら、わざわざ村を救ったりはしないだろう」


村長の言葉に、衛兵たちも渋々と頷いた。


「ありがとうございます。お言葉に甘えます」


こうして、寛人の異世界での第一歩が始まった。

村人たちの歓待を受けながら、彼は心の中で呟いた。


(さて、これからどんな冒険が待っているんだろうな...)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る