神様から無限の力をもらったので、異世界で無双して世界を救います!
星宮 嶺
第1話 現代から異世界へ
カタン、カタン——。
単調な足音が、がらんとした駅のホームに響く。
夕暮れ時、最寄り駅まで歩いてきた無限寛人は、ふと空を見上げた。
オレンジ色に染まった空。夏の終わりを告げるような、どこか物憂げな雰囲気が漂っている。
帰宅部の高校生である寛人にとって、この景色は日常そのものだった。
「はぁ...明日も学校か」
寛人は小さなため息をつく。彼の成績は優秀、運動神経も抜群。クラスメイトからの人望も厚く、教師からの評判も良い。
誰が見ても、順風満帆な高校生活を送っているように見えるはずだった。
しかし、そんな彼の心には常にある種の物足りなさがあった。
「もっと...何か、あるはずなんだ」
自分の言葉に首をかしげながら、寛人はホームに到着した電車に乗り込んだ。
ガタン。
扉が閉まる。そして——
「え?」
突如、車内が眩い光に包まれた。
まぶしさに目を細める寛人。その光は、彼が今まで見たこともないような、不思議な輝きを放っていた。
「な、何が...」
驚きに声を上げる間もなく、寛人の意識が遠のいていく。
...
...
...
「ここは...どこだ?」
目を開けると、そこはもう電車の中ではなかった。
寛人の周りには、まるで宇宙のような無限の空間が広がっていた。
足元には、キラキラと光る道が伸びている。その道は、まるで星屑で作られたかのように、かすかに明滅している。
「歩けってことか...」
他に選択肢がないように思えた寛人は、その道を進み始めた。
歩を進めるにつれ、遠くに何かが見えてきた。
それは...巨大な円卓だった。
円卓は、まるで宇宙そのものから削り出されたかのように、深い青と紫の色合いを湛えている。
その周りには、三つの巨大な玉座が配置されていた。
「よくぞ来た、異世界から召喚されし者よ」
突如、耳に響く荘厳な声。
寛人が顔を上げると、円卓を囲むように立つ三体の巨大な存在が目に入った。
「我らは、この世界を守護する三柱の神である」
左には炎のように燃え盛る髪を持つ女神。その目は、まるで溶岩のように赤く輝いている。
中央には、まるで宇宙そのもののような姿の神。その体は星々で構成されているかのようで、時折流星が走るのが見える。
右には、氷の結晶のように輝く髪の女神。その肌は透き通るように白く、冷気を纏っているようだった。
「汝に託したい、我らの願いがある」
宇宙のような姿の神が告げる。その声は、まるで天地を揺るがすかのような重みを持っていた。
「この世界は、今まさに滅びの危機に瀕している」
「そして、その危機を救えるのは——汝のみなのだ」
「え?俺が?なんで俺なんですか?」
寛人は困惑しながらも、その場の雰囲気に圧倒されて聞き入る。
彼の頭の中は、まだ現実感のなさと驚きで一杯だった。
「汝には、特別な素質がある」
「我らが持つ力を、余すことなく受け止められる器なのだ」
炎の女神が告げる。その声は、耳に心地よい温かさを感じさせた。
「しかし、よく考えるのだ」
「この力を受け取れば、もう二度と元の世界には戻れぬ」
「それでもよいのか?」
氷の女神が問う。その声は、寒気を感じさせるほどに冷たかった。
寛人は一瞬だけ躊躇った。
脳裏に、両親の顔が浮かぶ。友人たちとの楽しい思い出が駆け巡る。
そして、あの物足りなさの正体。
(俺は...ずっと、何かを求めていたんだ)
寛人の中で、決意が固まる。
「...行きます。俺に、力をください」
三柱の神は満足げに頷いた。
「よかろう」
「我らの全てを、汝に与えよう」
三柱の神の体から光が放たれ、それが一筋の光となって寛人に注ぎ込まれる。
「うわああああっ!」
激しい痛みと共に、寛人の体に力が流れ込んでいく。
それは、彼の細胞の一つ一つにまで染み渡るような感覚だった。
そして——
「無限の力」
「全知全能の智」
「不死身の肉体」
これらの力を得た寛人は、かつてない高揚感に包まれた。
彼の体は、内側から光を放っているかのようだった。
「さあ、行くがよい」
「我らが世界の——エターナリアの救世主として」
光が再び寛人を包み込む。
目を開けると、そこは見知らぬ世界だった。
草原が広がり、遠くに小さな村が見える。
空には、二つの月が浮かんでいた。一つは青く、もう一つは赤い。
風が吹き、寛人の髪を揺らす。
その風に乗って、未知の世界の匂いが運ばれてくる。
「ここが...エターナリアか」
寛人——いや、無限寛人は呟いた。
彼の目には、不安と期待が入り混じった光が宿っている。
(さて、どんな冒険が待っているんだろう)
寛人は深呼吸をし、村への道を歩み始めた。
彼の冒険は、ここから始まる。
知らない世界。未知の力。そして、待ち受ける数々の試練。
しかし、寛人の心は不思議なほど落ち着いていた。
(まあ、なんとかなるさ)
そう呟きながら、寛人は歩みを進める。
彼の背後で、朝日が昇り始めていた。
新たな世界での、新たな人生の幕開けだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます