第2話

こうして俺とあずさは付き合うことになった。

「れんーすきー、頭撫でてー」「はいはい」「うぁーおちつくー」超リラックスモードであずさは天使のような笑顔を見せる。かわいいかよ。後ろに顔をそらした。

「うーれんがめーあわせてくれないー」

俺とあずさはうまくいっていた。デートを何回もしたし、いい雰囲気になったこともある。だが、キスはしていない。いつも避けられる。やっぱりうまくいっていた、そう思っていたのは俺だけなのかもしれない。



「あ、課題置きっぱだ。出さないとやばいんだよなー。」

俺はその日、忘れ物を取りに行ったんだ。これが全ての始まりだった。

「てかあずさのやついつ別れんの?」

「一か月のときに別れるんじゃない?」

「まあ長いほうが楽しみも増えるかー」

「あずさはさぁー神崎先輩が好きなんだから、早めに別れそうだけどね」


ちなみに神崎先輩という男は別名女子の登竜門のクッソ爽やか系イケメンのバスケ部の先輩で女子生徒の憧れの的である。大人になる過程で誰もが一度は好きになるということで登竜門らしい。

まあつまり非モテ男子の敵みたいなやつである。

男子に告られ、振った女子が神崎先輩に告るなんてよくある話だ。だが、いい人過ぎて恨まれないのが恐ろしい。


まあ話は戻すが、最初は聞き間違いかと思った。あずさが嘘告?そんなことするはずない。あんな天使みたいに笑う子だぞ?

そうか、いらない噂が流れているだけなんだ。又聞き効果ってやつだ。何度も言われたことだ。


「あいつら不釣り合いすぎるよな」 「脅されてんじゃね?」「あり得る」

「あずさと付き合うなら神崎先輩でしょ」「幼馴染だからといっても釣り合わないよねー」


嫉妬した奴がそんな噂を流しているんだ。前世でもみた。

成績がいいからと疎まれ、失敗をなすりつけられ、昇進がなくなった同僚。その時は同僚と一緒に抗おうとしたが、無駄だった。立場が悪くなるだけだった。

そういう奴ほど隠すのがうまい。「普通」に生きるためにも無視するのが一番だ。そう前世で学んだ。


でもやはり信じ切れなくて、抑えきれなくて部活中であろう、あずさのもとに行った。


体育館はキュッキュッというシューズの音とボールをつく音が響いていた。

そして、シュートを決め、喜ぶあずさを見た瞬間確信した。やっぱりそうだ。あずさが嘘告なんて人を弄ぶような真似をしない。あんな純粋な笑顔でそんなことをできるはずがないと。


そして、俺はほっとした気持ちで課題を取りに行った。もうすでにあの女子たちは帰っており、俺は課題をとってせっかくなのであずさを待つことにした。


「あーずさ?」

「あれーれーん?こんな遅くまで待っててくれたの!?」

「もしかして早くイチャイチャしたかったの?しょうがないなぁー。えいっ!」

俺が構える姿勢をとり、あずさが抱き着こうとする寸前でストップする。

「どうかした?」

そして、クンクンと自分の腕を嗅ぎ、

「やっぱ汗臭いからお風呂入ってから!!」



「で?とうしたの?」風呂を上がったあずさが尋ねてくる。相変わらず肌がすべすべでそうして何度も見ているが、風呂上がりのあずさの何というかほやほや感が完璧的なかわいいを作っている。ちなみにここはあずさの部屋。実は窓が近すぎるせいで行き来できるのだ。小さい頃はあずさが俺の部屋来ていたこともあったが、中学生ごろから危ないため、俺がこっちに来ている。


「いや、課題忘れちゃってさ」

「それだけでれんが待ったことないでしょ」

「いや、もう恋人だし」

「ふーん、まあそういうことにしといてあげる」

あずさが俺の膝の上に乗る。猫みたいでかわいい。

「大丈夫?なんか嫌なことでもあった?

嫌なことあったら遠慮せず私を頼ってね。もう恋人なんだから。」














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