ルッキズムの女王

夏木 咲

ルッキズムの女王

ー 世の中にあふれるルッキズム。


ー それはいつも私を苦しめる。



今日から晴れて高校生になった。入学式が終わり、解散と号令がかけられた教室には既にグループができていた。なぜ既にグループができているのだろう。自己紹介で言っていた出身中学はほぼバラバラだったはずだ。


未だグループに入れていない私はとても焦った。私の席から少し離れた場所に女子の四人グループができていた。話しかけようか迷っているとそのグループの会話が少し聞こえてきた。


「あの窓際に座ってる子、声かける?」


たぶん私のことだろう。誰にも声をかけることができずに窓際の席に座っている人間など、この教室に私しかいない。


「いや、ちょっとダサくない?メイクもしてないし、あんなダサい子と関わりたくない。陰キャそうだし。」


メイクをしている子が言った。そうか、中学まではメイクがダメだったが高校からはして良くなったのだった。だからメイクしてない私は“ダサい”のか。


入学初日から心が折れそうになった私は足早に教室を出た。両親と合流した私は帰路に着いた。家に帰ってから私は一人、部屋で泣きながらメイクや垢抜け方を調べた。見た目だけで話しかけてもらえなかったのが悲しかった。悔しかった。



私は高校三年生になった。二年間見た目を磨こうと頑張った私は“ダサい”と言われなくなった。友達に容姿を褒められることが増えた。その代わり今度は“キツそう”と言われ始めた。


なぜ人はこうも見た目で人を判断するのだろう。見た目だけで人間を判断できるほど、お前達の目は優れているのか。


何をしても見た目で判断されるならもうどうでもいい。今までは流行りに乗ろうと頑張ってきた。でも、これからは“自分ウケ”を一番大事にしよう。人目を気にするよりも自分に好かれる自分でいる方がいい。自分の好きな“見た目”でいる私は世界一だ。


今日も鏡を見る。鏡に映るのは私が世界で一番好きな“見た目”。


たぶん世界で一番ルッキズムという眼鏡で私を見ているのは私なのだろう。


そう、私はルッキズムの女王。



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ルッキズムの女王 夏木 咲 @Blooming-edelweiss

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