アンソロジーとして見てみよう

「場所選びは大事。環境的な条件をクリアしたうえで、いろんな場所が選ばれていて、そのバリエーションはいろいろあったよ」


 そのうえで、

「入賞作品の舞台を各都道府県のどこなのかを見てみると、見事なくらいバラバラだった。もしかしたら、わざとそうなるような選び方をしているのかも?」

 という仮説がでましたよ。




 せっかくなので、もう少し。

 内容についても入賞21作品を俯瞰してみよう。


 さて。

 21本すべての作品は「怪異との遭遇」を物語としている。

 では、最終的に怪異はその本懐を遂げたのか。あるいは未遂(じつは単なる悪戯だったケースも含む)に終わったのか。はたまたラストシーンでの決着は示唆にとどまり、怪異の被害にあう予感が残っただけなのか。

 以上、物語のラストを3つのケースに分けてみたよ。結果は以下の通り。


 本懐    7件

 未遂    8件

 予感    6件



 これまた実にキレイに分散されておりますね。

(もしかしたら私の読み取りが失敗している作品がある可能性もありますが……。ま、大幅には間違っていないはず、と思います)



 あくまで私の印象なんだけど。

 応募作品全体で見たら「未遂」の比率はもっと大きかったような気がするんだな。

 もし本当にそうだったとしたら。

 やっぱりラストシーンのあり方についても、意図的にバランスが取られている感じがするよね。




 引き続きまして。

 怪異の正体についても見てみましたよ。


 これ、面白かった。


 幽霊が5件。

 神2件。

 狐狸のたぐいが3件。

 鬼、宇宙人、動物、河童がそれぞれ1件ずつ。

 1番多かったのは「怪異の正体が不明だった」というもので、これが7件でした。


 結果そのものはそんな感じだったのですが。分類されたそれぞれの集団のなかでのバリエーションがなされていて、調べる前に思っていたよりも、細かく分けられていたように見えた。

 例えば、正体不明のグループの中では、女の子の姿をした正体不明のものだったり、歴史の影のような男たちであったり、ぜんぜん何だか分からないものだったり、正体不明は正体不明なりにイメージの分散がされていたし。

 2番目に多かった幽霊についても、そのグループ内でのタイプはいろいろ。

 全体的には、やっぱり偏りがないようにバランスが取られている感じがしたかなあ。

(あ。例によって、私の読み間違いがあったらゴメンナサイです)




 で。

 データ取りつつ思ったんだよね。


 

 あー。

 これって、アンソロジーを組む時のバランス感覚と似てるんじゃないかなー? って。


 雑誌というより、アンソロジー。

 いろんな作者、いろんなタイプの作品を集めて。

 集めることで全体としてひとつの世界観を提示、一冊の本にする、というスタイルの。

 よく短編小説なんかでやる、あれですよ。あれ。



 そう考えると、見えてくるものがある。

 


 っていうか、こういうタイプのコンテストって、あるよね?

 最初から商品化が決まっていて、そのための中身を公募するタイプのコンテスト。

「SARF×カクヨム 短編こわ~い話コンテスト」というのは、そういうコンテストだったんじゃないかな。



 考えかたとしては。

「こわ~い」アプリそのものが、ひとつの作品なのであって。

 そのなかのひとつひとつの作品は、「こわ~い」を構成するパーツ。

 だから、「こわ~い」としての纏まりのために、ふさわしいパーツが入賞作品が選ばれている……と、捉えるのが正しいような気がするんです。


 もちろん、そのパーツのひとつひとつに力がないと、全体の作品として失敗しちゃうわけなので。

 全体のなかの一部に見られているに過ぎないんだから、我々の作品なんかどーでもいいって意味ではないよ。


 すべての作品が仲間だよ! というのと同時に。

 どの作品もみんなライバルだよ! ということでもある。

 私の作品であなたの作品が引き立ち、あなたの作品で私の作品が輝く。そういう機構であるのが理想ってこと。


 アンソロジーってそういうものだよね?


 まあ、私の認識ではそんな感じだ。




 そもそも。

 この「SARF×カクヨム短編こわ~いコンテスト」って、入選したらAR音声化してアプリに入れる企画だよ(*゜▽゜)_□って、最初っから書いてあったよね。


 そうなのだ。

 よくよく考えたら、SARFさん、母体はエイベックスさんなのだった。


 って思うと。

 これ、アンソロジーというよりは、アイドルグループなんかでお馴染みのタレントの売り方と発想は一緒なのかもね?

 ユニット組ませてグループ売りするの。


 いちばん最初の段階で21作品のグループを作って売り出そう、という枠組みがあって。

 大賞はセンター。

 プラス優秀賞20作品を配置する。

 そういうイメージ……。




 おお、なんてことだ。

 これが正解に近い気がしてきたぞ。



 うーん、なんだか、地下アイドルになった気分……f(^ー^;ど、どきどきするぅー。

 ボイトレとダンスレッスンにいそしまねばー。




 そして。


 なるほど。

 そういう目でみると分かる。



 いづれ、この「こわ~い」(そういえば、この記事書いてる段階でアプリの正式名称はまだ分かっていないのよ。ってか分かってないよね?)アプリそのもののファンができると仮定する時。

 かつ、「こわ~い」をコンプリートしてやろうという強者ツワモノの出現を期待する時。

 聴き手を飽きさせずに次のポイントに足を運ばせるためには。

 全体としての統一した世界観や雰囲気だけでなく、各地ポイントで個性ある物語が聴けるということは、やっぱり重要なのだな。


「あ、前に聞いたやつと同じじゃん」ってなったら、企画としては負けなのよ。

 バリエーションは必要なのだ。




 ファンの期待を裏切らない。

 飽きさせないぞ!

 という、この流石さすがな視点。



 うん。

 気がついてみると、しごく当然に思えてきたよ。





 だから選考にあたっても。

 ユニットを組むように、似た作品同士は整理される過程がワンステップあったんだろう。


 そのことは、最初っから読み解いていて然るべき事だったんだろーなー。

 と、今は思う。



 私、そんなこと、ぜーんぜん考えてなかったよー。


 他の入賞者のなかには、こういうこともちゃんと認識して戦略を立てた人もあるんだろーな。


 ん?

 それとも、分かってなかったの、私だけだったりする?


 そう考えると、ほんと、私ってラッキーだったんだな……。




 と。

 いろいろグルグルしましたが。




 とりあえず。

 アプリありきで、全体として見る視点が存在することと。

 全体のなかで、期待される役割がそれぞれの作品にあるんだろうなあ、ということ。

 それくらいのところは、私たちレベルの立場でも、理解しておいてもいいんじゃないかと思うんだ。



 というのも。

 その辺のことを理解しているのといないのとでは、入選の確率が変わってくるような気がするんだよね。



 だってさ。

 以前、私が不思議だー不思議だーと騒いでいた「なんでこの作品が選ばれてないんだ?」問題。

 ここにきて、かなり解決しましたよ。

 第4話「もっと大事なことがある」でお話した安全性をクリアしてなくて弾かれてると思われる作品と。

 今回お話している、他作品と世界観が被る作品。例えば、大賞作品と似ていた作品なんかは、「どっちかひとつだけ」という選び方をされた結果、落選したんだと理解できるんだよ。

 あれも、これも……たぶん、そう。


 むむむっ、納得してしまったー。




 ひるがえって。

 拙作なんぞは、応募作品のなかに似た作品ってなかったんじゃないかな?

 まあ、その分「これがアリかナシか」が問題になった可能性はあるけどw




 そう考えると、おそらく。

 拙作は全体から俯瞰した時にバリエーションとして必要な「個性的だけど外れすぎてはいない」という枠に、運良く滑り込めたんだろう。


 うーん。

 私、やっぱ、一生分の幸運、ここで使いきってないかU^ェ^U?www




「個性的」枠は、この手のアンソロジー的な選び方をするコンテストには、必ず存在すると思うので。

 次回の「第二回 SARF×カクヨム短編こわ~いコンテスト」に応募予定の、そこの貴方!

 この枠を狙うのも、アリアリですよ!!!



 とはいえ、一番大きいのはあくまで「王道=児童書こわ~いシリーズ」枠だと思います。

 思い込みかもしれないけど、大賞もこの枠から出るんじゃないかな、普通に。

 だからこの枠の中で、魅力的なバリエーションを見つけていくのが、一番良いっていうのは変わりないとも思いますのよ。


 実際、今回入賞した作品も大半が「王道」枠です。



 でも、どっちに狙いを定めるか。

 たぶん「王道」枠と「個性的」枠、闘い方が違う気がするので。

 その辺は意識的であったほうが良い。

 そういう風には思います。



 個人的に思うのは。

 普段ホラーを書いているバリバリのホラー猛者だったら「個性的」枠を狙ったほうが書きやすいんだろうし。

 逆に、ホラーが苦手な書き手さんは「王道」枠なら書きやすいと思うんですよね。

 ホラーというより、ちょっと怖いところもあるファンタジーだと思っていただけると。「王道」枠、意外と懐は広いような気がいたします。



 でもって、応募総数とかも増えるといいなあ。



 いろんなタイプの人が、いろんなタイプの作品を持ち寄ってできる。

 それがアンソロジーの醍醐味というもの。

 個性豊かな才能が集ってこそ、そのユニットは輝くのだ。


 それにさ。

 いろんな人のいろんな作品がもっと読みたいよね!


 そう思っているのは私だけじゃないはず!




 うーん、楽しみだなあ「第二回SARF×カクヨム短編こわ~いコンテスト」!!!

 開催、ぜーんぜん未定なんだけどーw

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