6 窓を叩く者
職場の後輩、Kさんという女性から聞いたお話です。
彼女がまだ高校生だった頃のこと。
「季節はよく覚えていないけれどエアコンを使っていたから暑い季節だった気がする」
とKさんは言いました。
二階建ての家で家族と一緒に暮らしていた彼女は、その日もいつものように、2階の自室で眠りについていました。
寝苦しいとか、考え事があったとか
そういうわけではないのですが、
Kさんは夜中に突然目を覚ましてしまいました。
何故だろう、寝付けないー
彼女は、どこか胸騒ぎを覚えて
窓の方を見ました。
Kさんのベッドは窓際にあって、
視線を少しあげるだけですぐ側に
カーテンを締め切った窓が見えます。
なぜだか、外に人の気配がしてならないのです。
Kさんが、気配に気づいて窓を睨んだのと
同時に、突然窓ガラスがバン!という
音を立てました。
心臓が縮み上がり、声も出せずにいると
音は激しさを増し、より強い音が
鳴り始めたのです。
バン!
バン!
バン!
その音は明らかに、人が外から窓ガラスを
叩いている音でした。
2階の窓は、防犯のために
面格子が取り付けられているのですが、
その障害物をものともしない激しい音に
Kさんは震え上がりました。
彼女をより追い詰めたのは、
隣の部屋で寝ているはずの
両親の存在でした。
いつもなら物音がすればやってくるのに、
これだけ大きな衝撃音が鳴っているにも関わらず、誰も助けに来ないのです。
目を離した隙に、外から入ってこられたら
どうしよう…。
そんな不安から、Kさんは怯えながらもその場から動くことができませんでした。
少しして、唐突に静寂に包まれました。
深夜特有の静けさは、余計に恐ろしいばかりです。
原因が分からないかぎり眠ることは
出来ないと、Kさんは震える手を窓に
伸ばしました。
そして、カーテンを掴み、勢いよく開きます。
開かれたカーテンから見えたのは、
真っ黒い夜の空。
窓の外には、誰の姿もなかったのでした。
「すみません。こんな話で。
遊安さんが求めていたのとは
違う話ですよね。
だって、幽霊が出てきませんもん。
窓を叩いてたのは、それこそ
不審者かもしれないし。
こんな話でよければ使ってください。」
と、Kさんははにかみながら話を締めました。
窓を叩いていたのが何者かは
分からないというKさんですが、
実は、カーテンを開ける前から、
そこに人がいないことは分かっていたといいます。
なぜなら、彼女の部屋にはベランダなどがなく
窓の外に、人が立てるようなところは
なかったのですから…。
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