第37話 優太の戦い

その頃、一階のホールでは優太がカエルに乗った魔女と戦っていた。


「いい加減しぶとい男でゲシ」


 打撃と火炎魔法の直撃を受けていた優太の体は満身創痍といった様子だが、優太はまだ膝をついていない。


「男には負けられねぇ戦いがあるんだよ!」


 ゲシゲシと笑う小さい魔女は小さなカエルを手からたくさん生み出しながら語る。


「馬鹿でゲシ。あちしたちに勝っても、未来で待ち受けるのは邪神の復活。優しい絶望ではなく慈悲もない滅亡が待ち受けているのゲシよ」


 優太は思いっきり頭を振って否定する。


「オレはダチの言葉を疑わねぇ! 時十が邪神なんて二度と出現させないと言うなら、平和な未来を守るのは今のオレたちなんだ!!」


 にたりと笑った小さな魔女は一斉に小型のカエルを優太に向けて放った。


「メテウ!! 捕縛しろ!!」


「無駄でゲシ。そいつらは触れれば爆発する爆弾でゲシよ」


 ボンッ! ボボボボボンッ!!

 メテウも優太もカエルに囲まれて大爆発の中体を吹っ飛ばされた。


「ギャハハハハハハ!! こんなに弱い人間族が信じる正義なんぞ実現不可能な夢物語ゲシ! あちしたちこそ世界を救える正義ゲシよ! 邪神を恐れる心こそ真実でゲシ!!」


 煙の晴れた床にはボロボロになって床に落ちたメテウと、傷だらけの優太が倒れていた。


 しかし、優太の目は開かれる。その目には正義を信じる強い光が宿っていた。


「へ、へへ、今のままじゃ、オレは弱い。わかってんだよ……」


 力を込めた腕は体をわずかに持ち上げていき、足も引きずりながら優太は立ち上がろうとしている。


「まだやるゲシか? そろそろあちしは飽きたので殺してやるゲシよ」


 小さな魔女が手から生み出していくのは自身が乗ってるカエルと同じ大きさの巨大なカエルたちだ。


 優太はずるずると体を引きずりながら片膝をついて体の半分は起き上がった。


「でも、オレはきっと、いつかは強くなれんだ。これから先も、困ってる人がいたら助けに行くからな」


「馬鹿でゲシね。弱いお前が助けに来ても死体が一つ増えるだけでゲシ」


 ふらつく足に力を入れて、優太はついに立ち上がる。


 そして、小さい魔女に向かって中指を立てた。


「ありのままでいいって言ってもらえたんだ!! こんなオレでも正義だぜ!!」


 瞬間、優太の右手の紋章が光り輝く。呼び声に応えるように床に倒れたメテウを火柱が包み込んだ。天まで届く炎は神聖な白い輝きを見せている。


「な、なんでゲシか!?」


「悪党をぶっ飛ばすオレたちの力だ!! 奮い立たせ! フェニックス!!」


「ケェエエエエエエエッ!!!」


 甲高い声で鳴くのは炎で体をつくられた巨大な不死鳥。成長を遂げた優太の召喚獣だ。


「っく、かかれカエル大爆弾!!」


 白い炎を纏いながらフェニックスは小さい魔女に突っ込んでいった。


☆☆☆


ふぅ、優太、お前が主人公だぜ☆


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