第11話 初バトル!
『どうした?』
『二階にいるのはB級以上の悪魔族だな』
もしも最上位クラスのS級が待ち構えていたら忠國の召喚獣でも歯が立たない。
「脳三先生、魔女ではありませんが二階からB級以上の悪魔族の気配を感じます」
「それも良し! なお良し! 生徒たちは後方より続け!」
勢いよく忠國は召喚獣を連れて二階への階段を上がっていく。
「どの道あたしの武器は後方射撃よ!」
ことりも忠國の後に続いて階段を駆け上がった。
「これはもしやユナの出番!」
「いや、お前より麦虎の方がなんとなく安心できる」
「麦虎ばっかりずるい~!」
そう言われても古代兵器の力は下手をしたら校舎ごと吹き飛びそうな気がする。
「麦虎、力を貸してくれ!」
『ようやく言ったか。良いだろう。貴様が倒れるまで力を貸してやる』
「魔人の正義と共に! 【ライズ】!!」
黒い靄をまとった麦虎の体は閏の手に収まると、漆黒の刀に姿を変えた。
魔人の能力の一つ。主従の契約を果たしたものを武器に変える力だ。
しかし、二階へ続く階段を駆け上がっていると、ことりの声が響く。
「美也! このぉ! 離しなさいよ!!」
何事かと思い、二階の廊下にたどり着くと、普段の校舎の様子と丸っきり変わっている。
「うええ!? 閏! 二階もロビーになってるよ!?」
「異空間だからな。元の構造と同じとは限らない。だが、これで御式美也がどこにも行っていないことが証明されたわけだ」
二階には一階と同じく御式商店出張所がある。商店の前には蝋で作ったような鳥かごがあり、人間が二人捕らわれている。
一人は御式美也だとわかるが、もう一人の男子生徒はよくわからない。
「ふひゃひゃひゃひゃ! そうだ! 魔法で語り合おうじゃないか!」
忠國は高笑いしながらロウソクを持ったA級悪魔と戦っていた。
「語り合っていないで倒しなさいよ!!」
ことりも自身の召喚獣で援護射撃をしているが、幼児サイズの悪魔族は的が小さすぎて上手く当たらないようだ。
『閏、ひとまず悪魔を倒せ。異空間から早く運び出した方がいいだろう』
捕らえられた二人は気を失っているし、麦虎の意見に賛成だ。
「脳三先生! 加勢します!」
閏は刀を握ると飛び出した。右足を軸にして回転すると横薙ぎの刀身が悪魔の腹を切り裂く。
「ギ、ギギ……!」
攻撃を受けたことが不服だったのか、悪魔の背中から大量の蝋が溢れだし、閏の体を取り込もうとする。
しかし、閏は構えを変えると腰を落とし、前に飛び出すように悪魔の喉を刺突攻撃しながら悪魔ごと前方に吹っ飛んで蝋から逃れた。
「脳三先生!」
「仕方ない。惜しいが魔界に帰そう! フルフル! デビルライトニング!」
棍棒を天に掲げた召喚獣から眩い光が放たれる。閏は悪魔を押さえつけるため、喉に切っ先を押し付けたまま、悪魔の体を床に縫い付けていた。
「閏に当たっちゃう!」
ユナが叫んだ通り雷光は閏も巻き込んで降り注ぎ、直後雷撃の爆発が起こった。
「ぐえ」
爆発に巻き込まれた閏は爆風にて飛ばされ、床に背中を打ち付けて落っこちた。
「やぁああん! どうして閏まで爆発させるの!!」
「っふ、問題あるまい。なぜなら魔人の体を燃やし尽くせるほどフルフルに魔力が無い!」
まぁ、これほど戦場で信頼に足る教師もいないだろう。
『ユナ、脳三は正しい。俺たち魔族は肉体が損傷しても魔力が回復すれば肉体も直せる。しかし、元から物質で構成されている人間族はそうもいかない。いざというときは、俺たちが盾になるしかない』
『かっこつけだなぁ、もう』
ユナは閏のそばに腰を下ろすと、閏の前髪をそっと撫でる。照れて逸らした視線の先では、蝋の檻から解放された御式美也を抱きしめることりの姿があった。
「美也! よかった美也! 生きてるぅううう!!」
ことりは泣いて喜んでいた。今回は異空間の入り方を特定出来ただけだが、魔導具の騒動に巻き込まれた人たちを救出出来ただけ良かっただろう。
まだ前髪を撫で続けているユナをそろそろ止めようかと思ったら、ふんわりと綿菓子のように微笑まれた。
「かっこつけだけど、さっきより好き」
「……お手軽だな」
トラウマを克服しなければいけない。強くなるために。魔人の息子としてみんなを守れるように、弱さを抱いたままでは成長できない。
ブービートラップも含めて魔導具の回収となる。目的を果たすためには己が強くなるしかない。父上も、いい加減立ち直れと言いたくて、この任務を任せたのだろうか。
なんとなく、息子を溺愛するあの父親ならありえそうだと思えた。
思い出されるのは目の前が真っ赤に染まった凄惨な現場。
そして、今も耳に残る母親の最期の声だった。
☆☆☆
一章はこれで終了です。
そういえば、攻殻機動隊、二期のOPもカタカナ表記だと「ライズ」ですね!
最高の名曲です☆ ぜひ歌詞付きで聴いてください(*´ω`*)
♡や☆やフォローでの応援お待ちしております!(^^)!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます