第47話 どっちみち行くしかない

「おい大丈夫か!」

俺は蹴り飛ばされたシエラフィルの元へと

駆け寄り治癒魔術をかけた。

「「ヒール」」

杖から生み出される淡い光が彼女を包む。

「けほっかはっ!!」

「ほっ。」

ひとまず息はあるようだ。よかった。

このまま全身を治癒して...

「ハッハァ!!スッゲェなぁ!!」

先ほど魔術で打ち倒したはずの男が

体を起こし、攻撃を受けた頭を抑える。

「まさか魔術の詠唱を

省略できるなんてな!!」

「今まで何人もの魔術師と戦ってきたが

 こんな奴は初めてだ!おもしれぇ!!」

「お前まだ動けるのか!!」

俺はシエラフィルの治癒を中断して

奴の方を向き杖を構える。

「あぁん?もう動けねぇよ。起きて座るので

限界だ。テメェがキツ〜イのを

当てやがったんだろが。」

そう言って男は俺を睨みつけてくる。

「それにしてもお前勿体ねぇなぁ。」

「この後体弄られて

死んじまうんだもんなぁ。」

「何を言ってる?お前を倒したんだから

 もうあとは船を折り返すだけだろ?」

「いいやぁこの船はお前たちのいた国に戻る

どころか目的地のギゼルア以外には

行けないぜ。」

「どういうことだ?」

「この船は歩き回ったお前たちなら

わかるだろうが、輸入品を運ぶ貨物船

ということになってる。」

「だが、乗ってるのは

俺だけで操縦士もいない。」

「じゃあどうやってこの船は

動いてるんだよ!」

あり得ない船が勝手に動くなんて。

「あの赤髪の女も言ってたがお前ほんとに

 察し悪いんだな。」

「この船も俺の雇い主の作品なんだよ。」

「目的地と出発地を設定したらそこを

往復すること以外何があろうとしない。」

「だからお前たちは俺を倒そうが倒すまいが、

 ギゼルアに行くしかねぇんだよ。」

クソッ!

俺は最初こそシエラフィルを止めたが、

すぐにアイツに協力したのは船を折り返させる為にはアイツと戦うのは避けては通れないと

考えたからだ。

なのに根本から間違っていた。

この船はそもそも折り返しができるようには

できていなかった。

どうするんだ。このままじゃ...

「と、とりあえずそいつ縛っときなさいよ。」

「いつ回復して襲ってくるかわからない。」

シエラフィルが傷ついた体を震わせながら

提案してきた。

「おい、まだ治りきってない。

動いちゃダメだ。」

「う、うるさい...気が済まないのよ。」

シエラフィルはあの男の方へと

向かっていった。

「アンタよくも騙してくれたわね。」

「へっ、お前も先生売ったくせに

よく言うぜ。」

「因果応報ってやつだぜ嬢ちゃん。」

「くっ。」

シエラフィルが奴の言葉で黙らされる。

「じゃあお前にも罰を喰らわさないとな。」

「いやお前だけじゃないこの悪事の元凶から

末端まで全部捻り潰してやるよ。」

「もう腹を決めた。」

「どうせ行くしかないんだどうせなら

全部ぶっ壊してやる。」

「お前に舐めた態度をとったやつは

全員ぶっ殺す。そうだろ?シエラフィル。」

もう決めた、アイツの雇い主も魔術師の研究を

始めさせたやつも全員俺が倒す。

「...フンッわかってるじゃない。」

「そうよ!!全員...ぶっ..ころー...」

シエラフィルが急に力を失い倒れる。

「あぁ!まだ治りきってないのに動くから。」

俺は駆け寄って再び治癒魔術をかけた。

「それにしてもお前省略にも驚いたが

すごい力だな。雷ってのもあるんだろうが

まるで体が動かねぇ。」

俺が慌てて治癒魔術をかけていると隣で

動けずに固まっている奴が話しかけてきた。

「こりゃお前はベース行きかもな。」

ベース?なんのことだ?

「おい、その話詳しく聞かせろ。」

俺は治癒を終えてやつに杖を向けた。

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