第42話 魔術師は一人では勝てない
「で、どうやって出るのよ。」
「? もう出れるだろ。」
「は?」
「俺は七歳のおチビちゃんだ。」
「お前の作ったわずかな歪みでも
通れるんだよ。」
俺は鉄格子を指差した。
「あとは、俺が外から魔術で
壊せばいいだろ?」
「なるほどね。
だったらさっさとやんなさい。」
「へいへい。」
俺は隙間を多少無理やり抜け出し鉄格子を
水魔術をウォーターカッターのように
することで壊した。
「...。」
檻から出たシエラフィルがなにか
言いたげな顔をする。
「アンタ早く手治しなさいよ。」
「は?」
「は?じゃないわよ私の手を治せって
言ってんの。」
「治すも何も自分でやればいいじゃねぇか。」
シエラフィルは少し怒った顔をした。
「私は治癒魔術なんて脇役の魔術使えないって
言ってるのよ!」
俺はシエラフィルの傷ついた手を
治してやった。
「フンッ!もっと早く治しなさいよ。」
この女まじで置いて行けばよかったかもな。
「じゃああのクソ野郎をぶっ飛ばしに
行くわよ。」
「いやちょっと待て。」
「俺の荷物ってどこにある?攫ったときに
一緒に持ってきてないのか?」
「はぁ?アンタの荷物がどこにあるかなんて
知らないわよ。」
「ほんとか?もっと真剣に考えてくれ。」
「ほんとよあんたの荷物の場所なんて
知らないわよ。ただ、アイツは面白そうとか
言ってたから。
アイツが持ってるんじゃないの?」
「そうか...」
「そんなことどうでもいいからさっさと...」
「じゃあアイツをぶっ飛ばしに
行くのはなしだ。」
俺は突き進もうとするシエラフィルを止めた。
「はぁ!?なんでよ!」
「なんでも何も戦ったところでアイツには
勝てないからだ。」
おそらくだが、アイツの雰囲気や歩き方から
してデアルと同等またはそれ以上の力を
持っている。
だとするなら俺たちに勝ち目はない。
「は!?意味わからないわ!魔術も使えない
低脳のカスに私が負けるわけないでしょ!」
「でもお前は現に捕まってるだろ。」
「それは...不意打ちされたからよ...」
「いや不意打ちでなくてもお前は負ける。」
俺は断言した。
「魔術師同士の戦いなら話は変わるが、
魔術師は一対一の戦いの場合
基本的には勝てない。」
「なんでよ!?」
「魔術は確かに強力だ。だが強力な物ほど詠唱が長く発動に時間がかかる。そのせいで詠唱を終える前に相手に攻撃され、負ける。」
「つまり魔術師はパーティでこそ力を発揮するが単体ではただの身体能力の低い
人間なんだよ。」
これは俺の経験則だからまず間違いない。
まあ、"アレ"があったらやりようはあるが、
どこにあるかわからないんじゃ
どうしようもない。シエラフィルには悪いが
今回は諦めてもらおう。
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