第41話 危険なやつら2
「あいつをぶっ殺す為なら
怪我なんてなんでもない。」
俺はシエラフィルという女が
少しわかった気がした。
この女はただ周りに甘やかされて育ったんじゃない。その高いプライドを保つためなら
どんな苦痛にも耐えられるのだ。
ただのお高くとまったお嬢様ではないのだ。
「わかった。俺にそれを手伝わせてくれ。」
俺はシエラフィルに頭を下げた。
この対応が今一番合理的だと感じた。
「...。」
シエラフィルは俺の態度を見て何かを
察したのかしばらく沈黙すると腕を下ろした。
「ここは、船の中よ。」
「船!?」
「ええ、そして目的地は
武装国家ギゼルアよ。」
「武装国家ギゼルア...」
「ってなんだ?」
俺は前世から地理に関しては弱かった。
「はぁ...。あんたそれでも教師?」
「面目ない。」
「武装国家ギゼルアってのはこの世界で最も
発展した国って言われてて武力であろうと
なんだろうと勝てる国はないって
言われてるのよ。」
「ほぇー。すごい国なんだな。」
「アンタほんとに分かってるの?」
「わかってるわかってる。それはそうと
その国になんで向かってるんだよ。」
「ギゼルアが世界一発展した国で通ってたのは
昔のこと、最近はそれよりも
悪い噂が流れてるのよ。」
「悪い噂?」
「ギゼルアの使者が魔術師を求めて
他国に潜んでいるって話よ。」
「その使者がヴィヘナ王国にもいたのよ。」
「ほーん、なんで他国にわざわざ行くんだ?
自国の魔術師で良くないか?」
「ギゼルアは人体実験のために魔術師を
攫っているのよ?自国の人間でそんなこと
すると思う?」
「それにギゼルアの人間は体質的に魔術を
使えないのよ。考えるまでもない低脳ね。」
「低脳って...。」
俺は苦笑いした。
「ってお前!
その使者に俺を売ったのか?!?!」
「ええ、そうよ。」
「ええそうよって、お前人をなんだと
思ってんだ!」
「やって良いことと悪いことがあるぞ!」
「アンタも絶対にぶっ殺してやるって
言ったでしょ?」
「加減なんてするわけないわ!」
そう言ってシエラフィルはそっぽを向いた。
この女ァァ。
「でもそれより私を騙したあの男は絶対に
許せない。」
「だから、私に協力しなさい!」
ちょっと感心してたところなのに相変わらずの
我儘っぷりだなコイツは。
「って騙されたってことは。
お前俺のこと拉致らせようと思ったら自分まで
拉致られちゃったってことか?」
「ダッセー!!」
ヘッ!言ってやったぜ。
俺が勝ち誇ったのは一瞬だった。
押し倒されるとすぐにマウントを取られて
一方的にボコボコに殴られた。
「すみませんでした。」
「フンッ。」
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