第40話 シエラフィルという女
「アイツ絶対にぶっ殺してやる。」
そう言うと先程まで俺の膝の上に倒れていた
デアル誘拐事件の犯人シエラフィルは牢屋の
鉄格子に向かって魔術を打とうと詠唱をした。
だが、発動はしなかった。
「なんでよ!!」
凄まじい怒りを感じる...
「この部屋にいると魔術が使えないんだ。
多分この模様のせい。」
そう言って俺は床の特殊な模様を指差した。
「はぁ!?」
シエラフィルはそう言ってしばらく固まると
牢屋の端へ行って座り込んだ。
「クソが、絶対に殺す。」
そう言ってシエラフィルは
鉄格子を睨みつけた。
「そういえばここどこなんだよ。」
「あと、お前何した?」
俺は彼女の方へ行って事態の把握を図った。
「...。」
だが、返事はない。
「なぁ、」
「私あんたのこと嫌いなのよ
見てわからない?」
シエラフィルはそう冷たく返した。
んだ、この女。絶対今言うことじゃないだろ。
「でもお前一人じゃここから出れないだろ。」
「手伝ってやるから、話聞かせろ。」
俺は苛立ちを隠せずに少し荒く返した。
だが、シエラフィルは
「ハンッ、アンタの手伝いなんか
要らないわよ。」
吐き捨てるようにそう言って立ち上がった。
そして再び鉄格子の方へと行った。
そして右手を大きく振りかぶり殴りつけた。
ゴンッと鈍い音がする。
何してるんだあいつ...
手が赤くなるが気にせずシエラフィルは
鉄格子を殴り続ける。
やがて手の皮が切れて血が出る。
だが、ゴンッという
鈍い音をたてながら殴り続ける。
「おい、やめろよ。血が出てるだろ。」
俺は痛々しいその音がたまらず
彼女の腕を止めた。
「はなせ...もう少しなのよ」
確かに鉄格子は変形していた。
だが手の状態も酷い。
「治癒魔術も今はかけられないんだ
やめろよ。」
そう言ってシエラフィルの顔をのぞいた。
「はなせ、私の邪魔をするな。」
シエラフィルの目は真剣そのものだった。
「私のことを舐めてる奴は誰一人許さない。」
「アンタもアイツも私のことを舐めてる奴は
全員ぶっ殺してやる。」
「その為なら怪我なんてなんでもない。」
「怪我は治っても私の傷つけられた
プライドはそいつをぶっ飛ばすことでしか
晴らされない。」
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