第36話 危険な奴ら

 俺が講師を始めて三ヶ月がたった。

「せんせー。私の作ったお弁当食べる?」

「だめだよぉ!

今日は私のを食べてもらうの!」

「は?私の食べてもらうんだし!」

俺は七歳児にも関わらず講師をしているということや授業中のマセガキチックな喋り方が

ショタコンな女生徒たちに刺さったらしく。

絶賛モテ期である。

昼の時間になるとこうやって三人の女生徒が

俺に手作り弁当を食べさせにくるのだ。

お姉さんっぽい喋り方なのがエリザ。

喋り方同様見た目も大人っぽく、

紫がかった長い髪と

綺麗なエメラルドグリーンの瞳が特徴的だ。

ちなみにこの3人の中で一番おっぱいが大きい。

次に少しロリッぽい喋り方なのがネル。

金髪のボブで瞳が赤いのが特徴。

ちなみにこの子が作る弁当が一番美味しい。

最後に少し語気が荒いのがラン。

ランは気分で髪型をコロコロ変えるので安定しないからたまに誰だかわからなくなるが、

この子は俺と感性が似ているのか

授業の出来がいい。

つまり可愛い生徒だ。

そしてこの三人に毎日囲われ、取り合いに

される俺、この際はっきりと言おう。

気分は非常に良い!!

「おーい先生...って、相変わらず

モテモテだな。」

そう言って俺に話しかけてきたのは

ファンネルだ。

コイツには初日から何かと世話になっている。

「おう、どうしたファンネル。」

「いやちょっと話しときてーことが

あってよ。」

そう言うとファンネルは深刻な顔をして

俺を教室の外へと連れ出した。

「わざわざこんな人気のないところまで来て

 どうしたんだ?」

屋上に連れてこられた俺はファンネルに

要件を尋ねた。

「いや、三ヶ月講師をやってみて

アンタどうだ?」

「どうもなにも。最初はそれでこそ嫌な気持ちだけどお前らも話してみれば結構素直な奴

ばっかりで気に入ってるよ。」

俺はファンネルの質問に素直に答えた。

「そうか。ならそれはよかった。」

「でも、一つ気をつけてほしい。」

「アンタの授業は確かに大多数の生徒から

見れば、出来の良さ悪さが一目でわかる

内容ではない分、焦ることや劣等感なんかも

なくて楽しい。」

「魔術の複合なんかは特にそうだ。」

確かに魔術の複合は魔力の比率や種類など

多種多様で第三者の俺でもない限り

評価はつけづらい。

「でも、なかには元の優劣がハッキリする授業で自分たちの優位性を示したいって考えてる奴らもいる。」

「まぁ、確かに今まではその授業のおかげで

 威張れてた奴らは面白くないだろうな。」

「でも、それがどうしたんだよ?」

俺は純粋に質問を投げかける。

俺に授業内容を変えろってか?

それは理事長が反対するだろ。

「問題はその不満を抱えてる奴らのリーダーが

 シエラフィル・ドラニクスなことだ。」

シエラフィル・ドラニクス?あぁ、

見学の日に俺に突っかかってきた赤髪の奴か。

「でもそいつがリーダーなことの

なにが危険なんだ?」

ファンネルはさっきまでの重い空気を

更に重くするように唾を飲み込んだ。

「アンタ、下手したら死ぬぞ。」

プッ。

お嬢様に逆らったから島流しよ!ってか?

いくら貴族とはいえそこまで頭のおかしい奴は

いないだろう。

きっとファンネルの考えすぎだな。

「ありがとファンネル、気をつけるよ。」

俺はファンネルに適当に返事をして

教室に戻った。俺はこの後すぐにほかの

生徒の素直さから貴族の醜悪さを

甘く見ていたこと、ファンネルの忠告を適当に受け流したことを後悔することになる。

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