第35話 初めての授業

「さてじゃあ、授業を始めます。」

なんでもこの大学では講師ごとに自由に魔術を教えて良いとのことだったので

俺は存分に実践ができる外を選んだ。

この大学は無駄にだだっ広いので、

建物の内外ともにスペースが多いのだ。

「では、昨日俺がやった複合魔術について

教えていきたいと思う。」

「と言いたいところだが。」

「今回は、魔術の仕組みについて

話していこう。」

「えー、先生さっさとあのすんげぇ速度の

岩魔術を教えてくれよ。」

「こら、口答えするなファンネル」

「へーい。」

俺はそう言ってファンネルをたしなめた。

「そうだ、せっかくだファンネルちょっと

 手伝ってくれ。」

俺はそう言ってファンネルを十メートル程

距離をとって俺の前に立たせた。

「よーしじゃあ俺が詠唱を始めたら

お前も雷魔術の詠唱をしろ。」

「もちろん初級だぞー。」

俺がそういうとファンネルは不満そうに

「なんで俺がこんなことを。」

とぼやいた。

「「怒りの精よ 貫くために 従い導け」」

俺が詠唱を終えるとファンネルも

詠唱を始めた。

「「怒りの精よ 貫くために 従い導け」」

「よーし、じゃあファンネル!

この雷ぶつけ合うぞ。」

「初級魔術と初級魔術をぶつけても

相殺されるだけ、一体何を考えてるんだ?」

授業を見させられている生徒が

怪訝な顔をする。

「よーし、じゃあ飛ばすぞファンネル。」

「せーのっ。」

俺の合図と同時に二つの魔術が射出される。

(先生よぉ確かにアンタの昨日の技は

すごかったけど。)

(同じ魔術同士じゃ相殺されるだけ...)

「って俺の方飛んできてんじゃねぇかぁ!!」

デアルの魔術がファンネルの魔術を貫き

ファンネルに直撃する。

「いってぇぇぇぇええぇぇっ!!!」

ファンネルの悲痛な叫びが響き渡った。

「ははーん。

ファンネル君よ俺を舐めてかかったね。」

「おい!教師が生徒に魔術で

攻撃していいのか!!」

ファンネルが倒れた体を起こして激昂する。

「俺七歳だからわかんないなぁー。」

「急に無知ぶるな!」

「ハッハッハッ!」

これが生徒を欺いて高笑う七歳児(二十五歳)の

姿である。

「まあまあ落ち着けよファンネル。」

「それで、先生今のはどうやったんですか?」

おぉ、どうしたこいつら。

本当に昨日の奴らと同一人物か?

「で、では気を取り直して。」

「今俺がやったのは魔術の射出速度と

威力の強化だ。」

俺は咳払いをして先ほどの現象について

説明した。

「たぶん君らは魔術を使う時に魔力の流れに

任せて使っている量を決めてるんだろう。」

「でも君らの言う初級魔術も手のひらから出す瞬間と射出の瞬間により多くの魔力を

込めることで、それぞれ威力と速度を大幅に

あげることができる。」

「もちろんこの方法による強化には限界があるが、最大まで高めれば君らの知っているより

高位の魔術にも届きうる破壊力なのでは

ないだろうか。」

一通り説明を終えた俺はそれぞれ実践の時間にして、ファンネルに治癒魔術をかけてやった。

「クッソいってぇ。」

「先生俺も一応貴族なんだぜ?」

そうファンネルは愚痴をこぼした。

「はは、スマンスマン。」

俺は申し訳なくなさそうに謝った。

「にしてもアンタすげーな。」

俺の治療を受けて立ち上がった

ファンネルが言った。

「正直言ってウチのクラスは崩壊してたよ。」

「常にマウントの取り合いで

誰がより高位の魔術を使えるか。

そんなことしか考えてなかった。」

「そのせいで全員荒んだ性格になってた。」

「でも見てみろよアイツらの顔。」

俺はファンネルに言われて生徒たちの

顔を見る。無邪気に笑っており、

まるで小さな子供のようだった。

「アンタの授業は全員がほぼゼロからの

スタートだからな今までのカーストなんかも

気にせず授業を受けられる。」

「だから結構みんなあんたのこと

気にいると思うぜ。」

「だといいけどな。」

ファンネルに俺はたんぱくにそう返した。


ファンネルの言うことは的を射ていたのか、

翌日教室に行くと今朝とは違い俺の元には

ファンネル以外の生徒も話しかけにきた。

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