第33話 VIP対応のワケ
「だはぁー、疲れたー。」
「お疲れ様ですシデア様。」
俺はあの教室を去った後フュエルデルさんに
連れられて理事長室に来ていた。
俺は慣れないことをしたせいか心身ともに疲れ切っており理事長室のソファに
遠慮なくどっしりと座った。
「そういえば理事長さんだったんですね、
手紙には人事を担当してるって
書いてあったのに。」
「人事も理事の一部です。」
フュエルデルさんはそう言って
俺の対面のソファに座った。
「ははは。」
なんだこのババア。
疲労のせいかさっきのクイズの
名残かフュエルデルさんにもうっかり
失礼な態度を取ってしまいそうだ。
「そういえば、僕の帰りの馬車っていつ頃
呼んでいただけますかね。」
俺はだらけた姿勢を
正して何気なく聞いてみた。
「そうですね、四年後と
言ったところでしょうか。」
「あー四年後ですか。
思ったより遠いですねー…」
「って四年後!?!?」
「どういうことですか!?」
「はて、お手紙をお読みになられたのでは
ないのですか?」
? なんのことだ?
俺は慌てて荷物を漁って手紙を取り出して
内容を見た。手紙には書いてあった内容は
もし来たければ馬車を送る。
ただし大学で働くのであれば全額負担するが、そうでないのならば馬車代、傭兵代宿泊費は
自費で出してもらうとのことだった。
確かにこれを読むと
俺が教師になるつもりで来たともとれる。
「確かにこの手紙を読むと俺が教師になる
つもりで来たと思われるかもしれませんが、
俺は家族に見学に行ってくると言って来ているのでどっちにしても一旦帰るつもりですよ。」
俺が教師をするつもりというのが勘違いであるということを俺はフュエルデルさんに伝えた。
「払えるのですか?」
「へ?」
「馬車での移動費、傭兵の人件費、我が校での宿泊費ついでに今日シデア様が壊しになられた
備品の修理費。」
「これら全てを払えるのですか?」
フュエルデルさんは
俺の払うものを並べていった。
「ち、ちなみにおいくらほどで...。」
フュエルデルさんは俺に耳打ちしてきた。
「..........ッ。」
聞いたことない額だ。
一体りんごがいくつ買えるんだ!
「なんでそんな額に!?」
「そうですね、費用のうちのほとんどは
傭兵の人件費でございます。」
「人件費!?」
「実は、あなた様の警護を担当をしていました方はフルセリア・ビルデリア様と言って
我が国で一番の武力を持つ方なのです。」
「そんな大層な護衛いらないですよぉ!」
「類稀なる才能をもつシデア様に
もしものことがあってはいけませんので。」
うぐっ。このババア、
俺があの堅苦しい手紙を最後まで読まないことを分かった上でとても払えないような
金額を押し付けるために、
あそこまでのVIP対応をしていたんだ。
クッソ抜け目ねぇ。
「...はぁわかりましたよ。
ここで働きますよ。」
「そう言って頂けると思っておりました。」
全てこの女の掌の上だったのか。
そう考えると教室で黙っていたのも俺が
どう対応するか見るための試験だったのか?
はぁ...。やれやれ完敗だ。
こうして俺はラグナ魔術大学で
教師として働くことになった。
それにしてもあの印象に薄い男この国で
一番強いのか分からないものだな。
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