第25話 初めての獣
ガサガサ。
なんの音だろう。動物か?
「なぁ、フュー。今あっちから音したよな。」
「ん?わかんない。音なんてしたかな?」
「僕、ちょっと考え事してたから...」
「ってシディ!!うしろ!!」
フューは顔を真っ青にしてそう叫んだ。
後ろ?
そう言われて後ろを振り向こうとすると同時に俺の体は真っ逆さまになって吹っ飛んでいた。
そのまま木にぶつかり地面に打ち付けられる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
クッッソが!!
痛みで頭に血が昇る。
一体何が起きたってんだ。
俺は掠れる声で治癒魔術をかけながら
前を向く。
「オオカミッ!!??」
体長は四、五メートルはある。
ただのオオカミじゃない。
おそらくただの岩魔術や雷魔術じゃ
倒せない...。
あいつを倒すには魔術を掛け合わせる必要が...
俺がそんなことを考えているとフューの方へと
オオカミが走って行った。
「フュー!!逃げろ!!」
フューは怯えて足がすくんでしまい
動けずにいた。
クソッ!間に合えッ!!
「「怒りの精よ 貫くために 従い導け」」
俺の魔術はフューにオオカミが飛びかかる
寸前で命中した。
オオカミはうめき声をあげながら
電撃で痺れた。
だが、しばらくすると煙を上げながら
俺の方を睨んできた。
クソッ...最大出力でも効かなかったか...
俺の体はいくつか骨が折れたままなのか、
治癒魔術をかけてもうまく動かなかった。
そして俺は怒り狂ったオオカミに一方的に
ボコボコにされた。
踏み潰され、打ち付けられ、
簡単には殺してはやらないといったふうに
じっくりと痛めつけられた。
ああ、これマジで死ぬやつだ...
「シディ...シディ!!」
フューが一方的に痛めつけられているシデアを
ただ見ていることしかできずにいる。
「誰かっ!誰か助けてっ!」
フューがそう叫ぶと遠くから
ザッザッと足音がした。
それにフューが気づいた頃には足音の主は
オオカミに切り掛かっていた。
「おい、クソ犬。
ウチの息子に何してやがる。」
足音の主はデアルだった。
デアルは額に血管を浮き上がらせてオオカミに
突き刺した剣を引き抜くと、
オオカミの腹に蹴りを入れて木に打ちつけた。
デアルは倒れているシデアに近づいて
息があることを確認する。
スーハー..スー...
(よかった、生きてる。)
デアルがひとまず良かったと安心していると、
オオカミが雄叫びを上げながら
突っ込んできた。
「おいクソ犬。テメェは許せねぇが、
今は時間がねぇんだ。」
そう言うとデアルはオオカミの
首を斬り飛ばした。
あっという間のことだった。
その間何もできずにいた自分にフューは
無力感を強く感じていた。
(僕はなにも...)
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