第15話 孤独のハーフエルフ

 レイゲルの盗賊団を壊滅させたことにより、デアルの馬が帰ってきたのでようやく王都から出られるようになった。念願の我が家である。

ただ、来た時とは人数が違う。

そう、あの少女も来ているのだ。


遡ること数時間前

「そういえばシディ。あの子ウチに連れて

 帰ることになったから。」

デアルは当然かのようにそう言った。

「え?どうして!?」

「本当なら親戚の元に預けるのが一番良いんだがあの子の親はエルフと人間だから婚姻を反対されたらしく両親戚とも絶縁状態なんだ。」

どうやらこの世界では異種族間の結婚は一部の地方ではあまり良い印象ではないようだ。

「だから身寄りがないってんでウチで面倒を

 見ることになったってワケだ。」

身寄りがない...か。

俺の頭の中で自分は天涯孤独だと言っていた

少女の悲しそうな表情が何度も浮かぶ。

「なるほどね、事情は分かったよ。」


そして現在に至る。

「よーし、到着だ。」

「おいデアル、フューが降りるの

手伝ってやれ。」

「うん、わかった。」

俺は返事をして、俺とデアルの間に乗っていた

ハーフエルフの少女が馬から降りるのに

手を貸した。フューとは彼女の名前だ。

フュー・グラウィベルという

名前だということを先ほどデアルから聞いた。

盗賊団との一戦以来ずっと虚な顔をしている。

無理もない。今まで奴らの嘘に騙され、

それに縋って生きてきたのだ。これからは

何に縋って生きていけばいいというのだ。

「フュー、今日からここがお前の家だ。

何も遠慮しなくていいからな。」

デアルはそうフューに優しく話しかけた。

そうだ。

今日からもうフューは俺の家族なんだ。

何に縋って生きていけばいいのかじゃない。

何が天涯孤独だ。

もう俺がフューに寂しい思いを

させなければいい。俺が隣にいてやればいい。

それだけのことじゃないか。


こうして長いようで短い王都の事件を

終えて俺の新生活が始まった。

しかし俺はこの後フューの驚くべき

真実を知ることになる。

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