第3話 変身

 そして、現在──


「やっべェ、この姿のままじゃ……」


(戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ!!)


 何度も何度も自分の心にそう言い聞かすヒロ。


 どうすれば、元の姿に守ることができるのだろうか。


(つーか、なんだよ。俺の身体に何があったんだ?)


 元々いえば、あの青虫が悪いんだ。

 何がどうなって、あの青虫が身体に入ってきた?


「戻りやがれ!!」


(戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻れ!!)


 シュウウウ、とヒロの身体からは煙が湧き出した。

 全身から焦げた匂いがする。


「ん? ん?」


 シュウウウ──ッ!!


「おお!」


 鏡を見ると、先ほどまでの悍ましい姿ではなくなっていた。

 元の姿に戻っていたのだ。


「ん、傷もなくなってやがるッ」


 制服には血がついたままだが、身体の傷の方はなくなっていた。


「さっきの姿になれば、傷がなくなるってことかァ?」


 にしてもである。


「俺、とんでもねェ力を見につけちまったなァ……」


 まさかこんなことになるだなんて思ってもいなかった。


 身体がまるで龍のような人間。


「龍人ッか……」


 ヒロの頬がニヤけだす。


「俺、龍人になれるのかよォ」


 全身から興奮が溢れ出した。


(ッつーことは、俺、冒険者になれるんじゃねェか!? おいおい、最高じゃんかよオオオ!! こんなことあるか普通)


「冒険者、冒険者、冒険者ァアアアアア──ッ!!!!」


 

 夜、自室のベッドに寝転がりながら考える。

 どうすればまた龍人になれるのかを。

 自分でなりたいタイミングでなれるものなのだろうか。


 全身に力を入れ、踏ん張る。


「龍人になれ、龍人になれ……」


 身体がポカポカと温まっていく。


「おお?」


 何度も何度も、龍人になれるように身体中に力を入れる。

 どんどんと身体中が温かくなっていく。


(この感じ、なれるよな?)


 …………。


 一瞬にして、先ほどまでの温かさがなくなった。

 一体、どうしてだろうか。


「うアアア、そううまくはいかねェよなァ」


 ハテ、どうすれば龍人になれるのだろうか。


「制御できねェと、冒険者になれねェよォ」


 ヒロは、立ち上がり、大きな欠伸をする。


「まッ、明日にして今日は寝るとするかァ」


 こうして、ヒロは龍人になる方法がわからないまま、眠りにつくことにするのだった。



 夢を見た。

 身体を炎の中に放り込む夢だ。

 汗はかくと同時に乾いていく。

 皮は燃え、肉が見える。

 肉すらも燃えていき、骨が丸見えになる。

 死んでいく。

 夢だというのに、痛い。

 なら、これは夢ではないというのだろうか?


 次の日──


 シーツが汗で湿っていた。


「はあはあ……夢か」


 なんだろうか。

 身体が軽い。

 まるで、昨日の龍人になった時のようだ。


「ん、待てよ。もしかして──」


 スマホを手に取り、カメラアプリを開き、自分を見る。


「おいおい、まじかよ……」


 スマホに映る自分は、龍人の姿をしていた。


「いやいや、確かにさァ、龍人になろうとしたけどよォ、このタイミングじゃねェんだよ!! 今から学校だッつーのに、これじゃァいけねェじゃねェかよ……」


(……学校どうしよう)

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