消えた二人3
***
情報を集めながら、二人を追いかけて、凪は隣町へやってきた。平日の昼間に外を出歩く学生は少ないと思っていたが、案外自分以外にも制服を着ている人を見かける。少しだけ心配していた“補導”の可能性はなくなりそうだ。ホッとしながら、凪は二人の捜索を開始した。
「……にしても、何からすればいいんだ……」
地元の小さな町で、二人の目撃情報を集めるのは簡単だった。なにより、二人はただそこにいるだけで目立つ存在なので、難航しなかった。
「しっかしなぁ、ここまででかいと流石に何からすればいいか……」
凪は聳え立つビル群を仰ぎ見た。正直、駅の改札から出るのも一苦労であった。何度も構内で同じところを歩きながらやっとの思いで外へと出た。これが夏だったら今頃制服はびしょびしょである。
急足で行き交う人を何とか避けながら、凪はキョロキョロと歩く。まだ二人は遠くへ行っていないはずだ。そんな望みをかけて、歩いていると、自分と同じようにキョロキョロと辺りを見回しながら歩く中学生ぐらいの女の子を見つけた。ショートヘアーで癖っ毛のある髪は少しだけ茶色に見えた。また顔立ちからして、高い鼻筋が目立った。凪はその子が何となく気になり見ていると、凪の視線に気がついた女の子が、走ってきた。
「あ、あの……つかぬことをお伺いしますが、お兄さん、隣町の和泉川高校の方ですよね…?」
こりゃあ驚いた。
凪は頷く。女の子は息を整えて口を開いた。
「わ、私、お兄さんと同い年ぐらいの人を探してて、――知っていますか? 綴って子と稀月って名前の子」
「二人を知っているのかっ⁈」
女の子の両腕を掴んだ凪に、通行人はギョッと表情を変えた。側から見ればいきなり小さな女の子を掴んだ凪は、危ないやつである。凪はパッと手を離して、女の子を人気のない方へ誘導した。普通ならば大人しくついていかないであろうが、女の子は深刻そうな顔をして凪のそばから離れない。凪自身も、何かを察した。
「わ、たしの名前は、綿といいます。近くの中学校に通う二年生です」
「俺は凪。――綴と稀月を探してるってことは、二人の知り合いか?」
「ふ、二人は、私のお兄ちゃんとお姉ちゃんで、小さい頃に離れちゃったんだけど、さっきからなんとなく二人の気配がしていて………」
――おいおい。そんなこと普通に発言していないだろうな?俺じゃない誰かに話していたら、変人扱いだぞ、綿ちゃんよ――
凪の沈黙に気がついたのか、綿は慌てた様子で両手を振った。
「あ、いやっ! 気配っていうのは、その……なんというか……姿が見えるっていうか……、におい……」
「焦らなくていい。俺も二人の事情は知っている。君が……特別だということも」
そういうと綿はパッと顔を明るくして、少しだけ安心したように笑った。
「にしても、俺を見つけた時焦っているようだったけど、……もしかして、二人になにかあったのか?」
綿はギュッと自分の制服のネクタイを掴んだ。ビル風に揺れて髪の毛が目にかかる。その髪の奥から見せる眼差しを、凪はしかと見た。
やはり、特別な者である、その眼を…―――。
「――弦月が、この街に来ています」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます