消えた二人2


 ガタガタと揺れる電車の中は、程よい気温だった。

 小さな町から大きな街へ向かう電車の中は、普段なら混んでいても不思議ではないが、なにせ、小さすぎる町なので電車の中は空いている。親子らしき二人組が座席に座って微笑んでいたり、大学生らしき人は立ったまま携帯をいじってる。優先席に座っている老人はコクリコクリと眠っていた。

 そんな中、私服を着た綴と稀月は座席に座って外の景色を嗜んでいた。


「ねえねえ、稀月。あそこの畑、すっごいカラスいるけど、面白いね」


 そう言って綴が指差す先には、たくさんの畑が広がっていた。しかし一目瞭然でわかるほどの黒いカラス達が、一つの畑に群がっていた。稀月は困った顔をする。


「ほんとだ。――面白くはないけど、不思議だね」

「かかしとか置いてないのかなぁ、あの畑」


「……ねえ、綴」


「なに?」


「本当に良かったのかい? 凪に何も言わなくて。…そりゃあ、凪が心配なのはわかるけど……」


「心配? あたしが? あいつを? んなわけないじゃん」

「じゃあ何で?」


「ただ邪魔だっただけ」


 綴は冷たく答えた。視線の先は未だ畑に向けられている。ゆっくりと伏せ目がちに瞬きをし、ガラスの向こう側のカラスを見据える。


「――あたしの近くにいたって……危ないだけだし」


 それから顎を少しだけ上に向けて隣に座る稀月を見た。


「あんただって、別に無理してあたしのそばにいなくたっていいんだよ」


 稀月はその燻んだビー玉のような瞳の綴から目を逸さなかった。その綴の言葉にどれほどの重みがかかっているか、稀月は知っているからだ。稀月は一息ついて電車の天井を見た。手すりが穏やかに揺れている。


「僕は、いたくて綴のそばにいるんだ。それは誰にだって口出しさせない」

「――ふん」

「それに、僕は綴がいないとメンテができないからね。自ら死を選ぶほど、僕も度胸はないよ」

「確かにそりゃそうだ」


 納得した綴は再び窓の外の景色を眺め始めた。


「でも綴。綿と弦月がいる場所に心当たりはあるの? 僕ら、二人と別れてだいぶ経つけど…」

「んー、大体はあるけど詳しい場所まではわからないかな。そこは稀月の力の発揮どころなんじゃない?」

「まさかの他人任せっ⁈」

「別にいいじゃない。減るもんじゃないし」

「そんな、適当な………、まあ僕も心当たりはなくはないけど」

「じゃ、決定ね。とりあえず私の心当たりのあるところに行って、次に稀月の推理するところに行く。そしたら大体見つかるでしょ。綿にいたっては、まだ中学生だし」


「二人一緒にいてくれれば一番いいんだけどね……」


 そんな都合よく行くかしらと、綴は小さく呟いた。





 街へついて数時間後……。


「な、んで、あんたがここにいんのよ……」



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