あっちの世界とこっちの世界3
恥ずかしいと言われ、凪も自分の答えが間違っていたことはわかり顔を赤くした。
「鬼門は北東にある怨霊・悪霊の出入り口って言われてて、本当は日本と中国で、色々な意味があるんだけど、僕らは“あっちの世界”と鬼門でつながってるって考えられているんだ。それも一人一人ね。誰もが鬼門を持っているってこと。たださっき言ったように普段は滅多に開かないし現れない。関わることのない世界の扉をみんな抱えて生きているんだ」
「あっちの世界って……つまり、鬼がいる世界ってことか?」
「それもちょっと違うんだよね。必ず鬼がいるとは限らない。鬼門の向こう側にいる自分は、鬼かもしれないし人間かもしれないし、蛙かもしれない。人それぞれ違うんだ。でもこっちの世界の自分よりも遥かに人智を超えた力を持っていることだけは確か。だから僕らは人智を超えた力を手にすることができた。その力には個人差があるけどね」
一旦整理しよう。
凪は言葉を選びながら口を開いた。
「つまりだな、俺たちにはみんな別の世界と繋がる鬼門があって、あのユキオって男達は、そこと繋がる子供を集めてたってことか?」
「そうだね。おおかたあってるよ」と稀月は頷く。
「じゃあ、俺にも鬼門ってあるのか?」
「あると思うよ。開くことはないかもしれないけど」
「……別の世界の、自分……」
――そんな話が、本当にあり得るのか……?――
「確認するけどよ、俺を騙してるわけじゃないだろうな? 俺のことを、からかっってるとか…――」
「騙してないよ。今話したのは全部本当のこと。話すつもりはなかったけど、ここまできたら話さないわけにもいかないし、なにより、友達じゃなくなるのは嫌だからね。綴が知ったら怒りそうだけど」
「それもそうだな……」
稀月と凪は目を見合わせて、少しだけ微笑んだ。なんだか、こうするのが懐かしく感じた。衝撃的な出来事からはまだ半日しか経っていない。それでもすごく長い時間を過ごしていたような気がした。
「これは僕の予想だけど、こういう形で連れてこられたのも、鬼門を開いた僕らが必ず必要なメンテのためだと思うんだ」
「ああ、最初に言ってた“めんて”ってやつか」
「うん。向こうの世界と繋がった僕らは、時々“整える”ことをしないと、存在そのものがどんどんずれていってしまうんだ。僕らはズレていった仲間を何人も見てきた。だから必ず欠かさずメンテをする。多分、そのために連れてこられたのかな」
「……体が治ったりなんかよくわかんない力使えるのはいいなって思ったけど、便利なだけじゃないんだな」
メンテと聞くと、楽なものではないのだろうと凪は思った。ちょうど凪と稀月の話が終わったところで、部屋のドアが開いた。部屋を出ていった時よりも不機嫌そうに綴が帰ってくる。
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