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「おまじない?」
若者は一瞬、無表情となって、虚空を見つめると、それからゆっくりと
善行さんの顔に視線を移し、笑顔を貼り付けます。
「おまじない、というか、お守り…祈りのようなものでしょうか…」
そうして、少しいたずらっ子のような顔つきになり、
「ボクが、自称アーティスト…と言ったら、どう思いますか?」
善行さんの顔を、試すようにのぞき込みます。
青年の顔をよく見ると、白目が大きくて、青白く、澄んだ瞳ではあるけれど、
瞳の奥が光を宿しているかのような、狂気めいた炎が見てとれました。
だけど、善行さんはそれを口にすることなく、
「さぁ~?学生さんかな、と思っていたんですけどね」と返すと、
「ま、そうですねぇ」と笑います。
「実際、絵を書いたり、作品を作ったりしても、生活には結びつかないからなぁ」
にこやかにそう言うと、
「好きなことで食べていけるって、スゴイことですよね」
ニコリとして、スーツケースをのぞき込みました。
「本当のところ、絵を書いたり、物を作ったりしても、もちろん売れないから…
画材店でバイトしています。
身分としては、フリーターかな?
でも、時折仲間たちとホールを借りて、個展を開いたりしているから、一応
活動はしているんですけどね」
誇らしげ気な顔をして、善行さんに向かってそう話します。
善行さんは、そんな若者を見返すと
「まぁ、ボクはその辺は、からきしダメだからなぁ」
と笑います。
「いやいや」
若者は大げさに声を上げると、
「だけど、どうして石を?」
再び善行さんは、同じ質問を繰り返しました。
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