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善行さんは、何だか気になってきて、
「保育所は、どうしているの?」
と聞いてみます。
余計なお世話なのかもしれないけれど、年寄りのお節介と思ってくれれば、
それでいい!と考えたのです。
「なぁに、それ?」
キョトンとしています。
段々と、嫌な予感がしてきます。
「じゃあ、ママは、一日お家にいるのかな?パパは?」
「んーん、夕方になるとね、キレイにお化粧して出かけるの。
ママはね、すっごく可愛いの。
でもね、ミツキはね、お利口さんにして、ネンネしてなさいねって、
言われるの」
唇をとんがらせて言いました。
「じゃ、一人で、待ってるんだ!」
善行さんが、ミツキちゃんにそう尋ねると、
「んーん、オジサンが来てね、ご飯を食べさせてくれるの」
そう答えます。
ミツキちゃんの説明では、今一つわかりにくいので、とりあえず後で、
彼女のお母さんに聞こうかと思います。
善行さんは何だか、ミツキちゃんが不憫になってきました。
だけど当の本人は、ケロッとした顏をして、
「ミツキはね、シロがいるから、寂しくないんだ!
ホントは、お家に連れて帰りたかったけれど、ママはダメだ!って
言うからねぇ~
ミツキ、この家の子供になれたらいいのに…」
それを耳にすると、善行さんは、自分にも昔、子供がいた時のことを
思い出しました。
今は、どこにいるのかわからない、息子たちのことを。
奥さんが亡くなってから、寄り付かなくなってしまいます。
気楽なものだ…と思うけれども。
よっちゃんたちがいなければ、孤独な老人になっていたと思うと、
妙にグッと、胸にくるものがありました。
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