5

「おはよう、ミツキちゃん!」

 善行さんは、ミツキちゃんが怖がらないようにと、努めて明るく声を

かけます。

ミツキちゃんは、少し肩をピクッとさせましたが、うなづきます。

「よく来たね!」

善行さんが頭を撫でようとすると、スルリとその手をすり抜けます。

目は大きく見開いて、じぃっと善行さんを見つめています。

仕方がないな…

善行さんは苦笑いを浮かべます。

(早く、慣れてもらわなきゃな!)と思います。


「猫ちゃんは?」

 小さな声で、ミツキちゃんが聞きます。

「どうかなぁ~来たかなぁ~?」

そう言うと、ミツキちゃんはガッカリとした顔をします。

「探してみるかい?」と言うと、

「うん!」とうなづき、跳ねるようにして、中に入って行きました。

踊るように、廊下を進み、居間の方へと足を向けます。


 すると若者の姿を見つけて、足を止めました。

ミツキちゃんは、またびくっとすると、今度は善行さんの後ろに

回り込みます。

若者は突然の侵入者に、驚いた顔をしますが、ニッコリと笑います。

 そして善行さんに向かって、

「お孫さんですか?」と聞きます。

「いいや」と答えると、

「へっ?」と素っ頓狂な声を出します。

「お客さんだよ」

善行さんの返事に、若者はそちらの方を向くと、

「でも…小さな子供じゃあないか」

呆れたような声を出します。

「子供でも、立派なお客さんだ。

 たとえ、小さくてもね!」

善行さんは、ウィンクして見せて、

「そうだよね?」

ミツキちゃんに向かって、話しかけます。

ミツキちゃんは、善行さんの足に隠れると、

「うん」とうなづきました。

そうして、善行さんは若者に向かって、

「ちょっと、待っててよ!」と言うと、

「ボスはねぇ、お庭の方に来るんだ」

ミツキちゃんの背中を軽く押して、

「さぁ、来てるかなぁ?」

どうかな、と縁側の方へと進みました。

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