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 善行さんの言葉に、ビクッと女の子は反応しました。

「いいの?」

ようやく目を上げました。

「あの子は、君の猫だ。

 君はあの子の世話に来る。

 そのために、毎日来てもらわなきゃあいけない。

 オジサンの手伝い、出来るかな?」

女の子は目を丸くして、善行さんを食い入るようにして見つめました。

サァ~ッと、血の気が戻ってきたようです。

「うん!」と大きくうなづくと、

「はいっ!」と言い直します。

それを見て、善行さんは頬を緩めるけれど、わざと固い表情を浮かべて、

「誤解しないで!

 ボクはあくまでも、ボスと同じように、本人のしたいことを、

 邪魔しないだけだ。

 だから、この子がイヤと言ったら、それはそれで、仕方ない。

 悪いけれど、他を当たってくれ。

 でも、この子がボスと一緒に、ここにいたいと言うのなら、追い出したり

 はしないよ」と言いました。

ミツキちゃんは、いちいち善行さんの言うことを、うなづいています。


「だけど、この子はどうかな?ここにいたいのかなぁ?」

 ミツキちゃんは不安そうに、聞きました。

善行さんは、う~んと考え込むと、

「聞いてみるか?」

「うん!…はいっ!」

と言いつつ、ミツキちゃんはようやく、腕の力を緩めました。

そぅっと、子猫を下におろすと、子猫はじぃっと、ミツキちゃんを見据えています。

「ねぇ…猫ちゃんは、どうしたい?

 ここに置いてもらう?」

ミツキちゃんのか細い声に、子猫は丸い目をひた、と見据え、そのあとに

ミャーと鳴きました。

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