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「あなた、便利屋なんですって?

 丁度、いいわ!

 この子の里親を探してもらえません?」

 母親はこともあろうに、

「手間がはぶけた!」と嬉しそうにしています。

その言葉に、善行さんはかなり落胆し、それから怒り心頭です。

(なんて、身勝手な大人なんだろう!)

善行さんは滅多に怒らない性質ですが、怒りのスィッチが入って

しまいます。

「ちょっと、いい加減にしてください!

 ここは、便利屋じゃあないんですよ!」

怒りを爆発させると、先ほどまで都合のいいことを、並べ立てていた女が、

黙り込みました。

それを見ていたミツキちゃんも、縮こまってしまいます。

ミツキちゃんのおびえた顔を見て、善行さんはちょっと後悔しました。

本当のところ、小さな女の子のことが、気になっていたので、嫌われたくは

なかったのです。


「それで、どうなった?」

 面白そうに、よっちゃんが笑っています。

商店街の寄り合いが、思ったよりも早く終わったので、例のごとく善行さんの

所へやって来たのです。

それにしても、ヒマな男です。

「おまえ、こんなところで、油を売ってないで、たまにはカミサン孝行したら

 どうだ?」

呆れて、善行さんが言います。

だがよっちゃんは、のん気なものです。

「油は売ってないよ!

 酒は腐るほどあるけど」

ケラケラと笑います。

「真面目にしないと、カミサンに追い出されるぞ」

善行さんがそう言うと、首をすくめます。

「しかし、ゼンコーさんが、怒るなんて、珍しいな!

 そんなに、ひどい母親なのか?」

よっちゃんは、明らかに楽しんでいます。

「見たらわかるよ!平然と『猫を捨ててきなさい』とあの子に詰め寄る

 ような母親だ」

「あちゃあ」

「だろ、おっかないだろ?」

二人は楽しそうに、笑いました。

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