17
「ミツキちゃん、さぁ、早く猫を捨てていらっしゃい。
お母さんが、見ててあげるから」
女の子は頭を振って、ますます猫を抱きしめます。
「ちょっと、アンタ、何てことを言うんだ」
善行さんはたまらず、割って入りました。
「あなた、何なんですか?」
にらみつける女性に、一瞬たじろぎました。
年の頃、30代の気の強そうな女だ。
にこやかにしていれば、そこそこの美人だろうに、眉間のシワが、
それを邪魔している。
スーツ姿に、トートバッグ。
袋からは、ペットボトルがのぞいている。
おそらく仕事帰りに、買い物をしてきたのでしょう。
《ミツキ》ちゃんは、おそらくお母さんのお迎えを無視したのか、
先に帰って、待っているべきなのを、寄り道して帰っていないのか。
二人の親子を見ながら、想像してみる善行さんです。
「何なんですって…この家の者ですが…」
「アンタ、関係ないでしょ?
親子の問題に、口を突っ込まないで、いただきたいわ!」
その女性は、善行さんに向かって、噛みつきます。
口を突っ込むな、と言われたって、女の子の顔を見ていると、
どうしたって、無視することは出来ません。
二人で顔を突き合わせていると…
ミツキちゃんのお母さんの表情が明るいのに、気づきました。
それからなぜか…彼女は善行さんに向き直ると
「あなた、便利屋さんなんですってね!」
ミツキちゃんのピンとした姿勢を、善行さんはぼんやりとながめて
いました。
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