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「ミツキちゃん、さぁ、早く猫を捨てていらっしゃい。

 お母さんが、見ててあげるから」

 女の子は頭を振って、ますます猫を抱きしめます。

「ちょっと、アンタ、何てことを言うんだ」

善行さんはたまらず、割って入りました。

「あなた、何なんですか?」

にらみつける女性に、一瞬たじろぎました。

年の頃、30代の気の強そうな女だ。

にこやかにしていれば、そこそこの美人だろうに、眉間のシワが、

それを邪魔している。

スーツ姿に、トートバッグ。

袋からは、ペットボトルがのぞいている。

おそらく仕事帰りに、買い物をしてきたのでしょう。

《ミツキ》ちゃんは、おそらくお母さんのお迎えを無視したのか、

先に帰って、待っているべきなのを、寄り道して帰っていないのか。

二人の親子を見ながら、想像してみる善行さんです。


「何なんですって…この家の者ですが…」

「アンタ、関係ないでしょ?

 親子の問題に、口を突っ込まないで、いただきたいわ!」

 その女性は、善行さんに向かって、噛みつきます。

 口を突っ込むな、と言われたって、女の子の顔を見ていると、

どうしたって、無視することは出来ません。

二人で顔を突き合わせていると…

ミツキちゃんのお母さんの表情が明るいのに、気づきました。

それからなぜか…彼女は善行さんに向き直ると

「あなた、便利屋さんなんですってね!」

ミツキちゃんのピンとした姿勢を、善行さんはぼんやりとながめて

いました。

 

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