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 善行さんはハッとして、見とがめると、その女性はムッとした顔で、

「うちの娘に、何のご用ですか?」

追いかけると、逃げたくなるのが、人の常…と聞きます。

声をかけたことを、少し後悔しますが、女の子の視線を感じると、

自分を励まして、

「ここは、私の家の玄関です」

キッパリと言い切ります。

「あら!」

女性は声を上げ、ジロジロと善行さんを見ますが、謝ろうとはしません。

それどころか、

「オタクはまさか、最近よく出没する『変態男』じゃあないですよね?」

あり得ないことを言い出した。

「はぁ?」

 どこから、その発想が?

 よりによって、そんなことを?

失礼にも、ほどがある!

善行さんは呆れ果てながらも、あまりにも失礼なこの女を、ムッとした顔で

見返します。


「お母さん、お母さんってばぁ…」

 女の子はようやく、口を開きました。

小さくて、か細く、猫のような声で

「ミツキちゃん、あなた、何をしているの?

 お母さん、言ったでしょ?

 猫を捨ててきなさい、って。

 それは、なに?」

女性は、女の子の腕の中の白いフワフワとした生き物を、指差します。

女の子はイヤイヤをして、頭を振ります。

「ミツキちゃん、ほら、早くして!オウチに帰るわよ!」

女性はイラ立った声を出して、女の子の腕から、子猫を奪い取ろうと

しました。

女の子はギュッと抱きしめたため、眠っていた猫も、ギャッという声を

出しました。

 

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